第174話
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摘された直後だからか、片足の動かし方が若干抑え気味になっている。
そのせいか身体のバランスがややふらふらしていたものの、制理の放った一球には恐ろしい力が加わっていた。
軍手を何重にも重ねた上条の手の中で、ドパァン!!、というとんでもない音が聞こえる。
硬式とは違うオモチャのボールのくせに、上条の掌にビリビリと痛みが走る。
「今の・・・落ちたか?」
「落ちたわよ!!
貴様は一体どこを見ているの。
ちゃんとバッター手前でカクッと落ちてたのが分からなかったの!?」
「ええー?
なんか普通に投げているようにしか見えなかったぞ。」
「かっ、上条は!!
バッターの視線から見えなから分からないのよ!!
実際にバットを振ってみればフォークボールのキレっぷりを味わえるはずなんだから!!」
「ほう。
言ったな、吹寄。」
上条はニヤリと笑うと、念のために用意しておいた数本のホウキとチリトリセットから、五〇センチ程度の長さの、プラスチックの柄がついた小型ホウキを掴み取り、
「その言葉、この俺に対する挑戦と受け取った。」
何となく野球のバットっぽく両手で握ると、手首のスナップだけでホウキを動かし、まるでタイミングを計るように小刻みにホウキの先端を回す。
一方の、制理は制理で、上条から軽く投げられたボールを受け取ると、口元に不敵な笑みを浮かべる。
「このメジャー吹寄の勝負球を打ち返そうとは、なかなか面白い事を言うサルね。」
「かっとばしますよー」
「ならば見せてあげるわ。
本物のフォークの落ちっぷりと、敗北の屈辱をォおおお!!」
「場外までズバンとなァあああああああああ!!」
放たれる白球。
風を切る音。
本当にボールが落ちるか確認してからでは、完全に振り遅れる。
上条は吹寄制理の真意と実力を測りかねたまま、勝負に応じるために動き始める。
全身に駆け巡る力と緊張。
上条はタイミングを計り、小さく息を吐き、両足を力を込め、腕の動きに合わして腰を回し、両手で握ったホウキを横方向へ思い切りスイングする。
フォークが来ると思い、少しだけ振る角度を下にするが、放たれた球はストレート一直線で全く落ちなかった。
結果、かすりもせずに空振りに終わる。
「全く落ちてねぇじゃねぇか!!」
「ちゃんと落ちているわよ!!
ちゃんと見たの!?」
勝手にヒートアップする二人。
雑草抜きに飽きた麻生は、その二人を見て思う。
(こっそり帰るか。)
早速実行するが、帰ろうとするところを制理に見つかり結局この場に縛られるのだった。
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