第二十話 少年期B
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キーを乾燥させ、今日みんなに振る舞う分をお皿に盛りつける。俺も一緒に作業をしたが、それと同時に袋に詰めていくものとに分けておいた。2人に不思議そうな顔をされたけど、ちょっとした菓子折りだとことわっておいた。
さすがに手ぶらで行くのは気が引けたので、用意ができてよかった。俺は3つ袋を準備していたので、それぞれにクッキーを詰めていく。2つは明日渡せるだろうけど、もう1つは後日になるだろう。ちゃんと保管しとかないと。
「結構遅くなっちゃったね。そろそろ後片付けをしなきゃ」
「あ、その前にさ。クッキー少し食べてみませんか。少し多めに作っていますし、味見も大切でしょ?」
「うーん、確かにそうね。……でも実は、アルヴィン君が食べてみたいだけだったりして」
「あー、それはひでぇ」
俺の反応に、お姉さんはくすりと笑ってみせる。けどまぁ、一応了承はもらえたみたいでよかった。今日こんな風にお菓子を作ろうと思えた、一番の理由をこなせそうだ。
「それじゃあ、あっちのテーブルで食べよう。ちょうどクッキーが置いてあるからさ」
「あら、本当。あんな離れたところに」
「行こ、お姉さん」
俺とアリシアはお姉さんの腕を引っ張って、テーブルに誘導する。クッキーは逃げないわよ、と俺たちの様子におかしそうにお姉さんは目を細めていた。
正直、お菓子を用意するだけならお店で買うこともできたのだ。開発チームのみんなのため、菓子折り用のためにと理由はいくつかあった。だけど、絶対に手作りじゃなきゃいやかと言われれば、俺は首をかしげる。なぜか物体Xにしてしまう俺にとって、調理はかなり難易度が高いものだからだ。
それでもこんな風に作ったのは、俺がどうしてもお礼をしたかったからだ。「ありがとう」って口にすればいいのかもしれないが、それだけでは自分が納得できなかった。一番気持ちを伝えるにはどうしたらいいかを考えた結果、俺が思いついたのが―――
「あっ…」
手作りのものっていう、なんともクサい物しか考えられなかったんだよな。
「これ、もしかして私?」
「正解! ココアパウダーで制服作って、チョコペンで表情作ったんだ」
「クッキーでね、お姉さんのちょっと飛び出ている髪とか頑張って作ったんだよ。あと前に見せてもらったデバイスも一緒にしてみたの!」
お姉さんがクッキーをお皿に並べている間に、テーブルの上に設置しておいたもの。細かい部分がかなり大変だったけど、かなりの自信作。プレゼントするはずだった人に、手伝ってもらうことになっちゃったけど、こうやってびっくりさせられてよかった。
「いつもありがとう、お姉さん。ささ、食べてみてよ」
「ありがとう、お姉さん」
「……うん、どういたしまして。それにありがとう、2人とも
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