第2章 真の貴族
第16話 極楽鳥
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し、当然、魔術を防ぐ結界の中に転移する事は出来ないけどね」
そう、タバサに告げた俺の周りを、春の早朝の丘を吹き抜けて行く風が、少し渦を巻く。
風が彼女の蒼い髪の毛をそよがせ、やや収まりの悪くなった前髪を、彼女に相応しい繊手でそっと払った。
……良い風が吹いているな。
この風が吹いて来るなら、シルフを現界させて、風の気を取り入れさせたら良いのでしょうけど、流石にそう言う訳にも行きませんか。次の目的地はガリアの首都。それなりに人間の頭数が居る以上、見鬼の才に恵まれた人間がいる可能性も高い。
そんな中に、昆虫に似た羽の生えた乙女などを連れて歩く訳にも行かないですからね。
少し、彼女から視線を外し、やや見当違いな思考で頭の中を埋める。
正直に言うと、こんなに傍にいるのに、彼女を見つめるのは、未だに慣れていせん。
「それで、今回はこの魔法を使ってリュティスまで行こうと思う。
但し、俺はそのリュティスに行った事がないから、タバサがイメージした風景や距離、方角などを【念話】で俺の方に送って貰って転移魔法を使用する。
もっとも、イメージした事を俺に【念話】を通じて送るのが嫌なら、他の方法を試すけど、どうする、一瞬で跳んでみるか?」
それまでの思考をオクビにも出す事もなく、用件のみをタバサに伝える俺。
もっとも、他の方法と言うのは、有視界内に転移を繰り返す事ですから、一度、上空に昇ってから方向を定めての転移魔法となるのですが。
それに、タバサのイメージを俺がちゃんと掴み切れていないと、まったく違う場所に転移して仕舞う可能性もゼロではないのですが……。
タバサが少し考えた後、コクリとひとつ首肯く。良し、これは肯定された、と言う事です。
そうしたら……。
再び、シルフを起動。そして、俺の差し出した右手に、彼女がそっとその手を重ねる。
そして、次の瞬間、俺とタバサの姿は、出会いの丘から完全に消え去っていたのだった。
☆★☆★☆
それで、先ず、リュティスへの転移魔法は成功して、そこで風竜を借りてサヴォワ伯爵領トノンと言う街まで移動。その後、シャモニーと言う街まで駅馬車を使用しての移動と言う経路と成ったのですが……。
「ひとつ、質問しても良いかいな、タバサ」
流れ出る汗を拭きながら、目の前に聳える紅い山を、少し陰気の籠った視線で見上げる俺。
……って言うか、ここに有るはずの白い山は何処に行ったのですかね。これでは、白い山では無くて、紅い山でしょうが。
俺と同じように汗を拭きながらも、何故か涼しい顔をしたタバサが首肯く。
但し……。
う〜む。矢張りこれは、何処かで着替えるべきですね
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