無印編
第二十話 裏 後 (クロノ、レイジングハート、リンディ、なのは)
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クロノは、目の前の人物に戦慄していた。
こうして、相対しているだけで、彼女の魔力の圧力に屈しそうになる。心が折れてしまいそうになる。全身の毛穴はあわ立ち、まるで極寒の寒さの中に裸で立たされているような怖気を感じる。クロノが、彼女と相対していられるのは、単にこの艦の執務官というプライドと前日の勝利の記憶があったからだ。それらがなければ、クロノはすぐにでも頭を垂れて、許しを請うていただろう。
しかし、彼女―――高町なのはは、クロノ内心をまったく知らないようにそこに佇むだけでクロノに圧倒的な威圧感を与える。
その闇のように黒いスカートと洋服も血のように赤い文様も、すべてがクロノの執務官としての本能に警告しか与えない。そもそも、少女だったはずのなのはが大人になっていることがおかしいのだ。確かに変身の魔法で大人になることは可能だ。だが、それが原因で魔力が上がるなんてことはありえない。ありえるとすれば、もともと大人で子どもの姿に変身しており、リミッターを切るなど、もともとの力を隠していた場合だろうが、彼女は現地住民であり、魔法とは縁がなかったはずだ。だから、この可能性はありえない。
――― 一体、どうなっているんだっ!?
きっと、管制塔の誰もが問いたいこと。だが、それを一番、声を大にして問いたいのは、きっとこうして相対しているクロノに違いなかった。
本当ならこの場を撤退したいところだ。
魔力がすべてではない。それが信条のクロノであっても、目の前の存在に勝てるとは到底思えない。思えるはずがない。
くそっ、と心の中で悪態つきながら、一体、この状況をどうやって収めるかを考える。
逃げる。不可能だ。そもそも、彼女は自分との模擬戦を言い出したという。ならば、逃げ出そうとしたところで、彼女からは逃げられないだろう。
制止の声をかける。それは、先ほどから彼の母親であるリンディ・ハラオウンが続けている。だが、彼女はそれに耳を傾けようともしない。
どうする? どうする? と不安だけが募る中、不意に目の前で佇んでいるだけだった彼女が飛んだ。空に向かってまっすぐと。まるで、吊り上げられたようにまっすぐ、上空に持ち上げられるように。ある程度、高さに到達した彼女は、眼下に位置するクロノを見下していた。その目は、暗く、一切の光がなく、絶対零度の冷たさを宿していた。まるで、親の敵でも見るような瞳だった。
その瞳に見据えられて、クロノは蛇に睨まれた蛙のように身動きできず、背筋にソクッと悪寒が走った。
かろうじて杖を構えられたのは、執務官になる前に受けた地獄のような特訓の日々と執務官として過ごした日々の賜物だろうか。
だが、杖を構えられただけでは、話にならない。次の彼女の行動に対応し
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