無印編
第二十話 裏 後 (クロノ、レイジングハート、リンディ、なのは)
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間はなかった。だが、その瞬間にレイジングハートはマスターに勝利を与えることができなかった。だからこそ、悔やむ。勝利を与えるはずのデバイスではなく、ジュエルシードに頼るなのはを見て。
だからこそ、レイジングハートは決意した。
―――Master, please give me the JS.
「……レイジングハート?」
レイジングハートの要求になのはは怪訝な顔をした。当たり前だ。レイジングハートの中には九つのジュエルシードがあるからだ。だが、それでも尚、望む。確かにレイジングハートの中の一つを使っても望みは叶えられるかもしれない。だが、あえて、なのはが持つジュエルシードを欲しがるのは、そのジュエルシードにはなのはの願いが乗っているからだ。
だから、レイジングハートは、もう一度繰り返した。
―――Master, please give me the JS.
もう一度同じ言葉を繰り返したレイジングハートになのはも何かを感じ取ったのだろう。首からかけているレイジングハートを首から外して、机の上に置き、なのははレイジングハートを覗き込むように顔を近づけた。
「レイジングハート、ジュエルシードをどうするの?」
問うなのは。だが、レイジングハートは説明できない。いや、説明するのは可能だが、非常に長い時間が必要となるだろう。しかし、そんな悠長な時間はないはずなのだ。だからこそ、レイジングハートは一言告げた。
―――Trust me, my master.
信じて。その一言だけだ。それは、僅か一ヶ月だけかもしれないが、マスターとデバイスの間で築かれた関係なのだろう。なのはは、やがてふっ、と肩の力を抜くと、ジュエルシードをレイジングハートに近づけた。
「分かった。私は、レイジングハートを信じるよ」
―――Thank you.
信頼を貰った以上、応えなければならない。
レイジングハートはすぅ、となのはが近づけたジュエルシードを飲み込むと、そのジュエルシードを使って己の改造を始めた。
ジュエルシードを安置する場所を確保。ジュエルシードの膨大ともいえる魔力を支えられる魔力線を配線し、レイジングハートの回路と直結。さらに、先の戦いの中で確認された回路の最適化を開始。
それは、ジュエルシードを使ったレイジングハートの強化だった。
ジュエルシードは、人の願いをかなえる魔力の塊と言っても過言ではない。その構造は、願いによって魔力回路を生成し、ジュエルシードに内包された莫大な魔力を使って魔法を使っているのだ。つまり、用途によって形を変える魔法回路と思っていい。そのジュエルシードが願いどおりに動かず、暴走するのは、願いを抱いたもののノイズと漠然さによるものが大
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