無印編
第二十話 裏 後 (クロノ、レイジングハート、リンディ、なのは)
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翔太が、翔太だけが何もない自分と友達になってくれる。そのことがただただ嬉しかった。
今まで自分の周りにいた人は、何も持っていないなのはとは友達になれなかった。だが、翔太だけが別だった。そのことがただただ、嬉しかった。今までずっと望んでいた友達。その答えはすぐ目の前にあった。
―――ショウくんが、ショウくんだけが、何もない私を見てくれる。ショウくんだけが、私の友達になってくれる。もう、ショウくん以外のなにもいらない。必要ない。ショウくんだけが私の友達なんだ。
もう、他の人などどうでもよかった。必要なかった。なのはが求めた友達は目の前にいるのだから。
本当の意味でのたった一人だけの友達ができた。それだけで、いい子であろうと自分を演じていた時間が、寂しいと枕を濡らした時間が、すべてを諦めた時間が、すべてが報われたような気がした。
「なのはちゃん、泣いてるの?」
「あ、あれ?」
翔太の言葉で初めて自分が泣いていることに気づいた。嬉しかったのだ。今まで生きてきたたった九年間の中で一番。なのはの倍以上生きている大人から見れば、些細なことなのかもしれない。だが、それでもなのはは涙を流すほどに嬉しいのだ。
翔太という名の友達ができたことが、嬉しくて、嬉しくて、涙を止めようと思っても、涙を流す原因である歓喜がなのはの心を振るわせ続け、底なしに湧いてくる。だから、涙を止めることはなのはにもできなかった。
そんななのはが突然、ふわっ、と温かいものに包まれた。それは、人肌の温かさ。そして、ここにはなのは以外にはもう一人しかいない。翔太だ。翔太がなのはを抱き寄せたのだ。なのはの耳にドクン、ドクンという翔太の心音が聞こえる。なのはを落ち着けるようにぽんぽんと優しく背中を叩いてくれる。
そんな抱き寄せてくれる翔太の優しさが嬉しくて、なのはにここまでしてくれる翔太が愛おしくて、それを自覚するとまた歓喜が溢れてきて、なのはは声をあげてしばらく泣いた。
どのくらいの時間泣いただろうか。それはなのはには分からなかった。ただ、目が腫れたように痛いのは分かっていた。
泣きやんで、翔太の顔を見ると照れくさくなって、思わず、えへへ、と笑ってしまった。
それを見て、「もう大丈夫?」と声をかけてくれる翔太。その優しさが胸に染みてまた泣きそうになったが、なんとか我慢して、コクリと頷いた。
「ふぅ、よかった」
本当に安心したような笑みを翔太が見せたので、なのはは心配をかけてしまったと申し訳ないような気分になり、翔太がそこまで自分を心配してくれることが嬉しかった。
一連のやり取りを終えたなのはは、まるで夢見心地になったようにふわふわとした感覚に襲われる。一般的に言えば、眠気なのだが、幸
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