無印編
第二十話 裏 前 (なのは、アルフ)
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。だから、無言で食べていたのだが、翔太がなのはのお弁当を覗き込んでいると思うと突然口を開いてきた。
「なのはちゃんのお弁当おいしそうだね。桃子さんが作ってるの?」
「え? う、うん」
今は友達付き合いのないなのはでも、この振りのようなものは分かっている。一年生のときの経験で分かっているというべきだろうか。おそらく、翔太のことだから、何も話せないなのはに話の切っ掛けを作るための言葉なのだろう。
そう思うと、気を使ってくれる翔太の心遣いが嬉しくて、こんな自分を気に掛けてくれる翔太に申し訳ない気持ちが浮かんでくるが、せっかくの切っ掛けなのだ。これに乗らないという選択肢はなかった。
「………少し食べる?」
間違ってないだろうか? と思いながらもなのはは、お弁当を翔太の方に差し出す。なのはの行動を見て、翔太がなぜか少し驚いたような表情をしていたが、「それじゃ、一つだけ」と数々のおかずの中から卵焼きに箸をつけて、口を運ぶ。
租借する翔太の顔を伺いながら、作ったわけでもないなのはが何故か緊張していた。
―――もしも、口に合わなかったらどうしよう?
そんなことを考えるなのはだが、それは取り越し苦労だ。なのはの母親はお菓子専門とはいえ、料理人なのだ。そんな彼女の料理の味が拙いわけがない。それを証明するように卵焼きを食べた翔太は笑顔になり、「おいしいね」と言ったのだから。
その後、なのはも翔太のお弁当の中から一つのおかずを貰った。それは、ミートボールであり、どこにでもあるはずの味なのだが、翔太のお弁当から貰ったからだろうか、いつもよりもおいしく感じた。
それを皮切りにして、二人の会話は弾んだ。話の内容は取りとめもない話ばかりだ。例えば、昨日のテレビの内容だったり、読んだ本の内容だったり、放課後、ジュエルシードを探しながらする会話となんら変わりない内容だった。
だが、それでもなのはは降って湧いた時間に幸せを感じていた。本来なら放課後限定の翔太との時間。それが学校の昼休みの短い時間とは言え、味わえるのだから文句の言いようもなかった。今日は、時空管理局との話し合いと昨日のこともあり、少しだけ緊張していたが、今だけはいつものように緊張していなかった。
しかし、そんな幸せの時間も長く続かなかった。不意に、笑っていた翔太の顔が真剣なものになり、口を開く。
「ねえ、なのはちゃん。今日の放課後のことだけど………やっぱりジュエルシードのことは時空管理局の人に任せたほうがいいと僕は思うんだ」
その翔太の言葉はなのはにとって衝撃的だった。
なぜなら、それが意味するのは、翔太にとってなのはの価値がなくなってしまったことを意味するからだ。それはなのはにとって受け入れられない結論だった。
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