無印編
第二十話 裏 前 (なのは、アルフ)
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このまま素直に校舎裏と言っていいものだろうか? という疑問がわいてきたからだ。せっかく翔太が誘ってくれたのに、こんな暗いところで一緒にお昼を食べる。それは、せっかくの楽しみが半減しているような気がした。だから、なのは無難にお昼を食べる場所として名高い場所を自然と選んでいた。
―――え? えっとね……い、今は中庭だよ―――
中庭ならいつも誰かがお昼を食べている。それに、中庭で誰かと一緒にお弁当を食べるというのはなのはの夢見ていた光景の一つでもあるのだ。その夢を翔太と一緒にできるなんて、なのはにとっては天にも昇る思いだった。
その後、少し翔太と話した後、なのは急いでお弁当箱を再び包んで、中庭へと駆け出した。もしも、なのはよりも翔太が早く着いてしまっては、嘘がばれてしまうからだ。それは、嫌だった。きっと、今まで何所で食べていたのか聞かれるだろうから。あんな暗い場所で一人で食べていたなんて、なのはは翔太に知られたくなかった。
小走りで中庭についたなのはは愕然とする。なんとか、翔太よりも早く着くことはできたのだが、生憎ベンチが一杯だった。ゴールデンウィーク前の春の陽気な気候だ。しかも、天気は晴れ。外で食べる人が多いのも納得だった。一瞬、場所を変えようかと思ったが、すでに翔太には、中庭だと告げている。他の場所に変更するわけにはいかなかった。
どこか、座る場所はないだろうか、と見渡してみれば、花壇のために積み上げられたコンクリートが目に入った。そこは、木陰で誰も座っていない。ベンチのように制服がまったく汚れないということはないだろうが、座れないことはない。だから、妥協案としてなのはは、そこに座った。
座って、今か、今かと翔太を待つなのは。その期待は、裏切れることなく、なのはがコンクリートの上に座ってすぐに校舎の方向から姿を現す翔太の姿を見つけた。
「なのはちゃん、お待たせ」
「ううん、待ってないよ」
そういいながら、なのはは翔太が座る場所を確保するために少しだけずれた。翔太は、なのはの気遣いに気づいたようで、なのはに向かって微笑むと、なのはの隣に腰を下ろした。彼の膝の上にはなのはと同じく自前のお弁当をと思えるものがあった。
「それじゃ、食べようか」
「うん」
翔太の声で二人ともお弁当箱を開けて、箸を握る。このときばかりは、なのはは、母親の彩り鮮やかなお弁当に感謝した。少なくとも翔太と一緒に食べても見劣りしないからだ。一緒に食べるのに質素な感じなお弁当であれば、もしかしたら、彼に悪い印象をもたれるかもしれないからだ。
翔太が隣にいながら嬉しいはずなのに、一年生の頃であれば、いい子の仮面を被って誰かと一緒に食べたことがあるというのに、このときだけは、何を話していいのか分からなかった
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