無印編
第二十話 裏 前 (なのは、アルフ)
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その日、高町なのははいつものように校舎裏で一人、お弁当を広げて食べようとしていた。つい、数日前に行ったサーチによる翔太の姿を見ながらお弁当を食べ、一緒に食べている気分を味わおうという計画は今日は実行していない。翔太が彼女たちと一緒に食べている姿を見てしまうと、また箸を折ってしまいそうだからだ。また、彼女たちが楽しそうにお弁当を食べている姿を見ていると、校舎裏の暗いジメジメした場所で一人、お弁当を広げている自分が如何に惨めかを見せ付けられるような気がするというのも大きな理由の一つだろう。
だから、今日もなのはは暗い校舎裏で一人お弁当箱を開ける。開いたお弁当箱の中身は、パティシエールであるなのはの母親が作っただけあって相変わらず彩り鮮やかなお弁当だった。だが、そんなことはなのはには関係なかった。その彩がいくら色鮮やかであろうとも、その彩を共有できる友人がいるわけでもない。見ているのは自分一人だけだ。ならば、お腹の中に入ってしまえば、彩りも何も関係ないのだから。もしも、お弁当中身が日の丸弁当のものであったとしてもなのはは気にしないだろう。
お弁当に箸をつけること数口、今日もこのままお弁当を食べてしまって、昼休みが終わる寸前までここでぼ〜っとしながら過ごすんだろうな、と信じて疑わなかった。だが、変化は唐突に訪れるものだった。
―――なのはちゃん? 聞こえる? ―――
なのはの頭の中に響いたのは念話という魔法で告げられた言葉。その言葉に聞き覚えは当然あった。なぜなら、その声は、なのはが毎日耳にしたくてたまらない人の声なのだから。
―――ふぇっ!? え? どうしたの? ショウくん―――
学校の時間の最中に翔太が魔法を使ってくるのは初めてだ。もしかして、何か問題が起きたのではないだろうか。例えば、ジュエルシードが発動してしまうような。それは、それで嬉しい。昨日、時空管理局とやらと接触したとはいえ、まだ、翔太はジュエルシードに重きを置いているはずだ。ならば、このまま二人で学校を抜けるというようなことも―――
だが、それはなのはの勘違いだった。
―――お昼ご飯を一緒に食べようと思って探してたんだけど、見つからないから。今、どこにいるの? ―――
その言葉を聞いて、一瞬、自分は校舎裏でお弁当を食べながら夢の世界にでも突入したのかと思った。まさか、翔太がそんなことを言い出すとは夢にも思わなかったからだ。なぜなら、なのはと翔太と知り合ってから一ヶ月、こんなことは一度もなかったから。翔太がお昼に誘ってくるなんてことは、なのはにとって想定の範囲外で、呆けてしまうのも無理もないことだった。
だが、翔太が誘ってくれるのにいつまでも呆けているわけにはいかない。念話に答えようとして、やめた。
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