無印編
第二十話 後
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クロノさんとなのはちゃんの模擬戦。いや、果たしてそれは模擬戦と呼称してもいいものだろうか。
『さあ、始めよう』
そう呟くように口にしたなのはちゃんは、リンディさんの「待ちなさいっ!」という制止の声も無視して、クロノさんから距離を取るようにはるか上空へと飛び立った。それを見て、なのはちゃんの変身ともいうべき変化に呆然としていたクロノさんも、なのはちゃんがやる気満々なのを見て、意識を切り替えたようにカード型のデバイスをなのはちゃんのレイジングハートのように杖に変化させて、構えた。
クロノさんが戦う体勢に入ったのを見て、大人になったなのはちゃんはクロノさんを上空から見下しながら笑っていた。それが楽しいことのように。おもちゃを見つけた子供のように。
二人の間と僕たちにも緊張感が漂う。次になのはちゃんが何をするか分からないからだ。もう、クロノさんは自分から仕掛けるつもりはないらしい。管制塔では、固唾を呑んで、二人を無言で見つめ、エイミィさんがなのはちゃんが大人になった原因を探るためか、すごい勢いでキーボードのようなものを叩く音だけが静かに鳴っていた。
僕たちは動くことができなかった。あまりの事態に動揺しているというほうが正しい。何も考えられない。パニックで訳が分からないときは、頭が空っぽになるというが、まさしくその状態だった。それになにより何をしていいのか分からない。なのはちゃんの下へ向かうべきなのだろうが、なのはちゃんが戦っている訓練室の場所を僕は知らない。リンディさんに聞ける余裕があるとも思えない。よって、僕ができるのはここで事態の推移を見守ることだけだった。
不意に、その緊張感を破るようになのはちゃんがレイジングハートを掲げるように突き出す。その瞬間、レイジングハートを中心として展開される弾、弾、弾、弾。一つが二つ。二つが四つ。四つが八つという風に次々と増えていくなのはちゃんの魔法弾。昨日もシューティングゲームのような弾幕だと思ったのだが、今のなのはちゃんの弾幕は、それに輪をかけてすさまじいものとなっていた。
気がつけば、なのはちゃんの周りは、なのはちゃんが作った桃色の魔法弾で一杯。クロノさんの視点から見るスクリーンでは、空が二、魔法弾が八といった情景で、その中に一人佇む黒いバリアジャケットのなのはちゃんだけが異様さを醸し出していた。
『アクセルシューター、シュート』
水面のように静かな声で、指揮者のようにレイジングハートを振り下ろし、彼女の周りに浮かぶ魔法弾に命令を下す。その命令はおそらく唯一つだ。つまり、見下しているクロノさんを狙うことだろう。
僕の予想を裏付けるようにアクセルシューターといわれた魔法弾の数々は、一直線にクロノさんめがけて走り始めた。その弾速は、昨日の模
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