無印編
第二十話 後
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擬戦で見たときよりも間違いなく速くなっていた。クロノさんの上空から振り下ろされた魔法弾が着弾するまでの時間は僅か。数秒あるかないかだろう。おそらく数百ものアクセルシューターが地面にほぼ同時に着弾した瞬間、アクセルシューターが爆発し、煙が訓練室の下のほうに充満すると同時に僅かだがアースラが揺れた。
「まさかっ! 結界で包まれている訓練室ごと揺らすほどの威力なのっ!?」
揺れることは予想外だったのか、リンディさんがモニターの中の光景を見ながら叫ぶ。それだけで、今のなのはちゃんの魔法弾の威力がどれだけ桁違いか分かろうというものである。
しかし、それだけの爆発に巻き込まれたはずのクロノさんは大丈夫なのだろうか。
だが、どうやら心配は杞憂だったようだ。爆発の際の煙の一部から飛び出してきた黒いバリアジャケットは間違いなくクロノさんだったから。あのアクセルシューターの中をどうやって掻い潜ってきたのか僕には分からないが、さすが執務官というべきなのだろうか。
必殺に近い魔法をかいくぐられてなのはちゃんも困っているのかな? と思ったが、違った。モニターの向こう側のなのはちゃんは煙の中から飛び出してきたクロノさんを見て笑っていた。まるで、それを期待していたように。どういうことだろうか。僕はあの魔法で蹴りをつけるものだと思っていたのだが。
煙から飛び出したクロノさんは一直線になのはちゃんに向かう。おそらく、接近戦で勝負するつもりなのだろう。なのはちゃんは基本的に遠距離から中距離の魔法を使う魔導師だ。僕が知る限りでは、なのはちゃんは近接での魔法を知らないはずだ。だから、クロノさんもそれを見切っての勝負なのだろう。
しかし、ここで先ほどの笑みが分かろうとは思わなかった。
一直線になのはちゃんの元へ向かっていたクロノさんの動きが止まった。その両手、両足には桃色の紐が動きを束縛するように絡まっている。あれは、僕が知っている魔法と同じであれば、バインドといわれる魔法である。なるほど、あの笑みの意味は、これだったのだろう。クロノさんが近接戦闘を仕掛けてくるところまで読んでいた。おそらく、いつものクロノさんなら気づいたかもしれないが、この状況で気づけ、というのも酷な話である。
そして、なのはちゃんは、バインドで身動きが取れないクロノさんに向けてすぅ、とレイジングハートの先端を向けた。クロノさんもバインドから抜けようともがいていはいるが、抜け出せる気配はない。
『いくよ、レイジングハート』
―――All right.My Master.
なのはちゃんの呼び声にレイジングハートは応える。それが引き金だったようにレイジングハートの宝石の部分を頂点として、環状魔方陣が展開されていた。
『ディバィィィィン』
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