無印編
第二十話 前
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謝礼金なんて頭の隅にもなかった。だからこそ、こうやって悩んでいるわけだが。
「申し訳ありません。率直にお聞きしますが、それはおいくらぐらいになるのでしょうか?」
恭也さんが先陣を切って聞いた。確かに、謝礼金がもらえるということで混乱していたが、いくらもらえるか、が問題である。小額なら手間賃かアルバイト感覚でもらえるかもしれない。
「そうですね、昨夜のうちに調べたあなたがたの金やプラチナなどのお値段から換算した値ですと、このくらいになりますね」
すぅ、とエイミィさんの手から差し出された紙を見る。そこに載せられた値は、やたらゼロがついていた。あまり数えたいとは思わないが、数えれば間違いなく親父の年収を超える額がそこには書かれていた。
「これが全額ですか?」
「いえ、ジュエルシード1つあたりの値段です。そうですね、これに実際に集めていただいた謝礼が入りますので……一番下の額になりますね」
この言葉に僕は絶句した。ジュエルシード1つで親父の年収を超えるお金と交換。しかも、謝礼が入って一番下に書かれた数字はもはや見たくもない数字だった。大きすぎて愕然としてしまうのである。お金とはある種の力である。故にあまりに額が大きすぎるとそれには恐怖に似た何かを感じてしまう。僕が庶民だからかもしれないが。
「もしかして、少なかったでしょうか? もう少しであれば、私の権限で増額も可能ですが」
「いえ、結構です。むしろ、多すぎます」
「そうですか?」
僕たちが愕然としていたのにそれを少ないと落胆していたと勘違いしたのだろうか。とんでもないことを言ってきた。さすがに恭也さんもすぐさま拒否していたが。しかも、恭也さんの多すぎるという発現に意外そうな顔をしていたのだから。
「ジュエルシードの危険度から考えれば、妥当な額です」
「いえ、俺たちはお金のためにやっていたわけではありませんので……」
「しかし、受け取っていただけなければ、私たちも借りを作ったことになりますので困ります」
謝礼金を値下げするという驚いた交渉を行う僕たち。実に奇妙な光景だが、それだけこの額は多すぎるのだ。莫大なお金を不意に受け取った人の人生は酷く簡単に壊れてしまう。宝くじなどで一等などの大金が当選したとき、換金しない理由で上位にあったのは、莫大なお金を得ることへの恐怖である。それをはるかに超える額なのだからしり込みするのも当然といえるだろう。
その後、話し合いは続いたが、お互いに平行線。あまりお金を受け取りたくない高町家、蔵元家と借りを作りたくない時空管理局。結局は、恭也さんが折れて、全額受け取ることにした。忍さんの「お金はいくらあっても困らない」という台詞で折れたようだ。
高町家と蔵元家の分配方法は、
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