無印編
第二十話 前
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は今まで一度もないのだから。
―――お昼ご飯を一緒に食べようと思って探してたんだけど、見つからないから。今、どこにいるの? ―――
―――え? えっとね……い、今は中庭だよ―――
あれ? と思った。僕が屋上から見たときは、一人で食べている子なんて一人もいなかった。つまり、なのはちゃんは誰かと一緒に食べているということだろうか?
―――友達と一緒に食べてる? それなら、僕は遠慮するけど―――
―――そ、そんなことないっ! 大丈夫だから。私一人だから。ショウくんも来てっ! ―――
………改めて屋上から見てみるが、やはり一人で食べている子はいない。つまり、これはなのはちゃんの嘘ということになる。だが、食べている場所について嘘をついてどうなる? 何か意味があるのだろうか? あるいは、僕にはいえない場所で食べていた? あまり気にしないほうがいいのかもしれない。
―――わかった。僕も中庭に行くね―――
―――うん、待ってるから―――
なのはちゃんとの念話を一度、切り、僕は中庭に向かうことにした。少しゆっくりとした歩調で。
◇ ◇ ◇
中庭に到着し、少し首を振って、周囲を確認すると日当たりのいい場所から少し離れた木陰になのはちゃんの姿を発見した。
中庭に設置してあるベンチがすべて埋まっているからだろう。木陰の石段に腰掛けたなのはちゃんは僕のことを待っていていてくれたのか、お弁当の包みをもったまま周囲を伺っているように見える。その様子が、飼い主を待つ犬のように見えると思うのは失礼なのだろう。
「なのはちゃん、お待たせ」
「ううん、待ってないよ」
まるで漫画の中にあるようなデートのワンシーンみたいだなと思いながら、少しずれて僕が座る場所を開けてくれるなのはちゃんの好意に甘えて彼女の隣に腰掛けた。
「それじゃ、食べようか」
「うん」
包まれていた弁当箱を取り出し、おかずとご飯の二段組になっている弁当箱を開き、手を合わせて、いただきますといった後、僕たちはお箸を手にとって、おかずに手を出した。
手を合わせた直後、ちらっとなのはちゃんのお弁当箱を見てみると少しだけ手をつけた跡があった。つまり、なのはちゃんはここに来る前にどこかで一人で食べていたわけだ。教室でも、中庭でも、屋上でもないどこかで。しかし、それを問うつもりは僕にはなかった。
さて、本当ならここで放課後のことについて話さなければならないのだが、いきなりそれでは、この先が暗いものになる可能性がある。だから、最初はジャブのようなもので会話を始めることにした。
「なのはちゃんのお弁当おいしそうだね。桃子さんが作ってるの?」
「え? う、うん」
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