無印編
第十九話 裏 (アリサ、アルフ、クロノ、なのは)
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なかっただろう。だが、アリサが負けず嫌いで、翔太とすずかが親友であるがゆえにアリサは悩みを放棄することはできなかった。
「どうした? バニングス。なんだか、イラついているようだが」
ふと振り返ると、そこに立っていたのはアリサたちの担任だった。アリサのあまり見せない態度を怪訝に思ったのだろう。
いつもはどちらかというとアリサの親友である翔太に用事が多い担任で、優等生といえるアリサはあまり話しこんだことはないのだが、アリサにとっては渡りに船だった。目の前の女性は先生なのだ。つまり、自分の悩みも知っているような気がした。
「先生、教えて欲しいの」
「ほう、バニングスが、か? 話してみるといい。私が教えられることなら教えよう」
すぐ傍にあったほかの生徒の椅子を引っ張り、担任はアリサの話を聞く体勢に入った。それを有り難いと思いながらアリサは自分の悩みの内容を話した。
「ふ〜む、それは難しい問題だな」
「先生でも?」
アリサの話を聞いた担任は、難しい顔をして顎に手を当てて唸る。それを見てありさも不安になった。先生でも解けない問題なのか、と。だが、アリサの不安げな表情を見て、慌てたように前の言葉を否定する。
「いや、難しいのとはちょっと違うかな。正確には答えがないから答えられないというのが正解か」
「どういうこと?」
今まで答えを探してきたアリサの悩みが答えがないことといわれてアリサは混乱する。ならば、今まで国語辞典や母親が買ってくれた本に載っていたものは何だったというのだろうか。その疑問に答えるように担任は言葉を続けた。
「バニングスが探していることは人によって千差万別なのさ。恋を麻薬のようなものと言う人もいる。楽しいものという人もいる。悲しいものという人もいる。切ないものという人もいる。感じ方なんて人それぞれ。だから、私はバニングスに対しての答えはない。バニングスに答えられるとしたら―――」
そういうと担任はアリサの胸を指差した。
「バニングス、おまえだけだよ。バニングスが恋だと感じたことが答えだ。それが楽しいか、悲しいか、切ないか、私には分からない。だから、言えることは唯一つだけだ」
そういうと担任はアリサの胸を指差していた手を戻して楽しいものでも見たようにカラカラ笑いながらいう。
「焦るな、少女。女の子である以上、避けては通れない道だ。ある日突然わかるかもしれないし、ゆっくりと分かるかもしれない。だから、焦らず、おまえだけの恋を見つければいい」
―――あたしだけの恋……。
その言葉は、酷くアリサを揺さぶった。
そう、アリサはアリサだ。すずかではない。おそらく、すずかはすずかだけの恋を見つけたのだろう。それが翔太だっただけの話である
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