第6話 死に顔動画【ニカイア】(2)
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縛り上げていた男たちを、自らに攻撃してきた男たちにぶつける様に放る。団子状になって視界から消えていき、再び、蛙のつぶしたような声が聞こえてきた。
青い肌、黄色く逆立った髪、朱の籠手と膝鎧を纏った3つの顔を持つ大男が、6つの腕に持った曲刀を嵐のように振り回し、一直線に屋内を駆け抜ける。
「あ、あんなの近づけねぇよ!!」
「なんのためにハジキ持ってんだ、いいからぶっぱなせ!」
そう罵りをあげながら、何人かが大男の後ろから銃撃を浴びせる。
しかし大男は、「後ろから、そして近づかぬとは利口だな」そう口では賞賛しながらも、全ての弾丸を手に持った曲刀で弾いていった。辺りに金属同士がぶつかる音が絶え間なく響き渡り、彼の足もとに鈍く光る弾丸が散らばっていった。
その光景を目の前にしても男たちは何が起こったか全く理解できないのか、銃を構えたまま呆然と立ち尽くしてしまう。
「だが、その程度では我が暗黒を払う事叶わぬ!」
そして大男は男たちへと向きを変え、曲刀を振る。曲刀からいくつもの竜巻が巻き起こり、無防備な男たちを巻き込んでその体を宙へと放り投げていった。
コンテナの向こう側だろうか、
「チミも自覚しなよ。ボクにメロメロだろ、チミ」
この場に相応しくない嫌に自信満々な声と、「か、体が動かねぇ」「何だ、何だってんだこの粘土細工やろうはぁ!!」という野太い叫び声。
そして、出口前。
白い煽情的な衣服を纏ったあの少女は、先には見えなかった蝙蝠のような翼を広げ床から少し浮いている。それを守るかのように、うつろな眼をした何人かの男が守るように取り囲んでいる。
「ふふっ、みんな楽しそうね」
この光景を、「楽しそう」と言う彼女の感覚が、少なくとも普通の人間に理解できるはずが無い。ただの年上の少女だと思っていた女性も、異形であった。
「じゃあ、おバカなみなさ〜ん。自分たちの仲間と争っちゃってくださ〜い♪
あっ、でも殺しちゃ駄目だよ。ジュンゴに怒られちゃうし」
軽い口調で自分を囲む男たちに命令する。それに「リリム様、めっちゃ好きやねん…」「人間の女なんぞごみや…」言葉は違うが、その命令を唯々諾々と受け、かつての仲間に群がって行く男たち。
「お、おいどうしちまったんだよ」「く、来るな。こっちに来るなぁ!!」
どうにか正気を保っていた男たちから叫び声が上がり、また新たな闘争が始まる。それを宙に浮きながら、本当に嬉しそうに眺める少女。
月村すずか、アリサ=バニングスの目の前には、正に地獄絵図が広がっていた。
アリサが、信じがたい光景に我を忘れて呆然としていると、
「あ、あれが悪魔、なの……」
となりですずかがそう漏らすのが聞こえた。
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