第5話 死に顔動画【ニカイア】(1)
[3/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
な時に彼が他人にかまっている余裕があるだろうか、少なくとも、リリムはないと考えたのだろう。だからこそ、唯一以前から純吾を知っているリリムが常に傍にいて、彼の心が充分に癒されるまで、外界からのあらゆる障害の防壁となろうとしているのではないか。
彼女が『一番好きなのはジュンゴ』と言ったのは、決して嘘いつわりのない、本当の事だったのだ。
そういう事情もあり、本当なら、その意思を尊重して彼が充分に心の余裕ができるのを自分たちも待った方がいいのだと思う。
けれども、忍にはどうしても今後のどうするかの相談を早めにする必要があると考えていた。
忍たち月村家は“夜の一族“という、特殊な家系にあった。
それだけなら別にいいのだが、”夜の一族“であるというだけで、理不尽を受けた事も過去にはあるし、襲撃によって命を失いかけた事もある。
本当なら助けた手前、最後まで面倒をみるのが筋なのだろう。しかし、彼の持つ力や、彼の安全を考えると、こちらの都合に巻き込まないためにも、早めに孤児院なりを探したほうがいいと忍は考えている。
???けれども、すずかは、彼をこうしようと知ったら、怒り出すかもしれないわね。
彼女が抗議に来る光景を思い苦笑するが、それでも忍は考えを否定しようとは思わない。
彼女は月村家の当主であり、どんな非道を冒してでも自分の家族を守ろうと決意していた。その為にはたとえ妹から恨まれようとかまわない、そう考えている。
「さってと……。じゃあ今日も、リリムさんにお願いに行ってみましょうか」
憂鬱な気分を一掃するかのように大きく背伸びをした後、忍は純吾とリリムがいる部屋へと歩き始めた。
その日も、純吾はあてがわれた部屋でぼぅっとしていた。
これからの事をどうしようか、悩ましい問題ではあるが、それでも今は考える事が出来ないし、したくもない。
それでも一度生まれた疑念は自分の意思とは関係なく膨らんでいく。
「あたま、痛い」
これからへの不安や恐怖が、ぐるぐるぐるぐると思考が回り、血の巡りの悪くなった頭を締め付けてくる。
そんなとりとめもない考えごとに身を任せていたら、ふと、携帯が鳴っている事に気付いた。それは、メールを受信した時の発光パターン。
「誰……?」
そんな当たり前の光景をなんとなしに眺めていたが、ふとある事に気付き、背筋が寒くなる。
このメールが、誰から送られてきたのか、という事実に。
自分のメールアドレスを知っているのは家族や親方、それに地震後に知り合った仲間などごく少数だ。だが、そのごく少数も向こうの世界での話であり、こちらには誰もいない。
では、誰が今の自分にメールをする事ができるだろうか?
「まさか」
その可能性を持っているの
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ