夢を見る姉
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て、頬についた泥をこする。ゆっくり重たげに、瞼が開き、黒い瞳が覗く。
「ノエル!無理しちゃだめじゃない。体弱いんだから!」
「今日は、姉さんの結婚式だから…」
ノエルは低い声で弱々しく言う。ノエルの長身を抱えきれなくて、あたしは左半身を支えるので精一杯だ。
「ノエル。健康が第一っていつも言ってるでしょ?姉さんの言うこと聞いて」
夢の中のあたしは、その抱えている男があたかもノエルであるかのように大事に叱る。ノエルとは、似ても似つかない、カルミナ族の男を…。
「姉さん。どうして、僕を探しに来てくれなかったの?」
不意に「ノエル」の声音が変わった。涙の混じったものになる。
「僕はずっと待っていたのに」
「ごめんね」
あたしは胸を打たれてそう言った。
「ごめんね。ひとりで寂しかったよね。ごめんね」
「姉さん」
黒い瞳があたしを見つめる。
「僕をひとりにしないで」
「ひとりにしない。ずっと姉さんが一緒にいるからね。もう大丈夫」
「ノエル」は泣いていた。あたしも悲しくなって、涙をぽろぽろこぼしながら言う。
「見つけたぞー!」
そこで感動の場面ぶちこわしの濁声がして、ぞろぞろっと禿げたオッサンが5人出てくる。揃いも揃って同じ顔。石飴屋のおじさんの顔になっていた。
「おじょうちゃ〜ん、石飴って、知ってるかなぁ?」
ぎゃー!おじさーんあたし弁償できるほどの稼ぎないですぅ!
「ちょっと!どうにかしてよ!」
あたしは「ノエル」に言う。
「ふん」
「ノエル」は不遜に鼻を鳴らすとどこから出したのか赤い棒を構えた。上に。
「おい、餅だ」
「え?」
「いいから、餅だ!」
も、餅!?
いきなり餅と言われて慌てたあたしは近場にあった玉葱を掴むと「ノエル」に向かって投げた。コントロールが悪かったのか、芽が出たままの玉葱はふわりと「ノエル」の黒髪の上に乗っかった。
「悪くない!次!」
「は、はい!」
玉葱を頭に乗っけたまま怒鳴られて、あたしは今度は大根を投げた。
「フン!」
最早ノエルのカケラすらない「ノエル」はものすごいスピードで赤い棒を振り落とすと、大根を見事に千切りにした。
「次ィ!」
「はいっ!」
そしてあたしは延々畑の野菜を投げ続け、投げるものがな
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