夢を見る姉
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変な夢を見た。
あたしは村にいた。騒がしい兄弟達の間で、息つく暇なくいつもの日常を繰り返している。
「聞いた?レアンオン兄ちゃん帰ってくるんだって!」
「えっレアンオン兄さまが!?」
あたしは胸の前で両手を組んで目を輝かせて喜んだ。
「ついに姉ちゃんも結婚かー」
「待ってた甲斐があったな!」
兄弟達が口々に祝ってくれる。
「ありがとう!あれ、でもレアンオン兄さま、都で、奥さん見つけてきたんじゃ…」
あたしがそう言うと、みんなに笑い飛ばされる。
「なに言ってんだよ。それ姉ちゃんの妄想?悪い方に妄想するなんてすげーな」
「結婚前は気分が落ち込みやすいって言うしな。サラ、レアンオンを信じれば良いんだよ」
あ…そうよね。うん。あたしの好きな、レアンオン兄さまだものね。信じなきゃ…。
夢の中のあたしは辻褄のあわなさになんの疑問も持たない。
そして場面は変わる。結婚式だ。あたしは溢れんばかりの花のブーケを胸に抱えている。
「おめでとう」
「おめでとう」
「サラちゃん綺麗になったねぇ」
「レアンオンも男前になったさ」
「おめでとう」
花がくるくると舞い落ちる。
「では、誓いのキスを」
あたしは幸せいっぱいで、隣の兄さまを見上げた。
兄さまは、長い赤い髪を後ろで一つにまとめて、あたしの好きな赤い瞳を柔らかく揺らして、優しく微笑む。
あたしも、恥じらいながら微笑み返す。
…。
あ、か?
「えっ!」
あたしは「兄さま」を突き飛ばした。和やかだった空気が変わる。
「サラ?」
傷ついた顔をするこの人は、違う。
レアンオン兄さまは、髪も、目も、赤くなんてない!
あたしは後ずさると、戸惑う人を突き飛ばして走った。
「サラ!」
風を切る、頬が熱い。
髪も瞳も赤いその人は、川で会ったあのラトゥミナ族の男だった。
逃げなきゃ…そうだ、ノエルはどこ?
ノエルはどこにいるの?傍にいてあげなきゃ…熱があるんだから。
混乱する思考のまま、あたしは走って家まで戻った。すると、家の畑に、ノエルが倒れているのがみえた。
「ノエル!」
あたしは慌ててノエルを抱き起こした。ノエルの黒い髪をかき分け
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