夢を見る姉
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「家族に持っても仕方がないでしょ」
「親しき仲にも礼儀ありという諺があってね…」
ちらとノエルは一瞬あたしを見て、またぱっと目を逸らす。
「なぁにこの期に及んで。あんたたちの世話はね、みっんなこのサラ姉さんがしてたのよ。今更ハジライもキツツキもあるもんですか」
あたしはそう言うと、ノエルの首を無理矢理こっちへ向けさせた。ごきりと音が鳴って、ノエルが声なき悲鳴を上げる。
「あ、あら?」
「姉さん!」
「ごめんね」
あたしはちらりと舌を出した。吼えるだけの体力が残っていれば首に問題はなさそうね。うん。
「よーしノエル今日は姉さんが風邪吸い取ってあげるからねーもー寝ましょ」
「それは良いけど…外套は脱いだ方が良いとおもうよ」
ノエルは諦めたように言った。
何気なく言われたその言葉にどきりとする。
…外套。
「…姉さんそんなもの着てたっけ?大きくない?」
どきどきっ。
「…着てたわよ?」
咄嗟にそう言ってしまったあたしのバカ!嘘つく必要がどこにあったのよ。でも時すでに遅し。
…だ、だってどう説明して良いかわからないじゃない?うん。そう。そういう理由。他の理由なんて、あるわけない。
嘘だと謝るタイミングを逃したまま、あたしは居心地悪くもぞもぞとする。
ごめんねノエル…嘘、ついちゃった。
「そっか」
純粋なノエルは疑うことも知らないまま頷いた。ああ、良心が痛い…。
あたしは一旦起きてラトゥミナ族から借りた外套を脱ぐと、丁寧に畳んだ。
これ…勢いで借りたままきちゃったけど…よかったのかな。
いいや、そういうことはみんな起きてから考えよう。今日はいろんな事が起こりすぎた。もーさっさと寝よう。
「よし!ノエルちゃんと布団は肩までかけるのよ。足も入ってる?お腹は出しちゃだめよ。上着の裾はズボンに入れること!」
「わかってるよ姉さん」
「おやすみなさい。あなたが夢の中も幸せでありますように」
「…姉さんも」
ノエルははにかみながら言った。
明日はかわいいこの子の風邪が良くなっていますように。
この子が良くなったら、この町を出て、大都へ行って…。
眠りに落ちる前に瞼をよぎったのは、赤い髪だった。
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