§12 強運と凶運
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だが失敗したらどうなるか見当がつかない。呼吸やら温度の問題は呪力・神力で強化すれば十中八九平気だろうが、真空の中に放り込まれて無事に動けるかわからない。もし平気ならば別の惑星に別荘を建てて優雅な生活を送れるので今後の人生は安泰だ。重力が地球と同じくらいあれば各種権能を駆使してもう一つの地球を作れる自信が彼にはある。その環境に辿り着くには何千何億年必要になるかはわからないけれど不老不死たる彼にとって時間など大した意味はない。
閑話休題、とにかく今回のように相手が呪力を放出して居場所を教えてくれているような状況でない限り狙った場所への転移は困難を極める。世界地図を用いて金閣寺の位置を探すようなものだ。地元の地理に精通していなければ、普通にやったら大体の位置しか補足できない。誤差が数十kmともなればエルでなくとも難色を示すだろう。しかも転移した先の安全は保障されていないのだ。
「帰りは歩く。なんとしても明け方までには戻るよ。とりあえずここでこんなことされたら三人に被害が出かねない」
「ホントに良いんですか? これだけ呪力放出している相手の所にノコノコ行くのは正体を晒すことと同義だと思いますが。欧州にどれだけ神殺しがいらっしゃるとお思いですか?」
「……」
黎斗が権能の行使をピタリとやめる。
「……何人いたっけ?」
黎斗のあまりの酷さにエルは嘆きたくなった。同胞の情報をきちんと把握していないにも程がある。隠遁生活するのならこれくらいの情報仕入れておくべきだろうに。
「……アメリカ大陸に御一人、中華大陸にも御一人、日本にマスター含めて御二人、あとは全員欧州かと」
「ってことは……四人? 行ったらバレるんじゃね?」
「だからそう言ってるじゃないですか。アフリカ大陸やらオセアニア地域、南極北極ならまだしもこんな激戦区に首を突っ込む必要性ありませんって」
道端で作戦会議を始める主従。突如立ち止まり顔を白黒させはじめた黎斗に関わらないよう、周囲の人間が彼を避けて動いている。そんなことにも気づかずに会議を続行するので、傍目には独り言を呟く危ない人にしか見えない。
「……気配、消えたわ」
白熱した談義の最中、状況を把握しようとした彼は呪力が消えていることに気付いた。これではもはや捜索も叶わない。こんな土地で夜中出歩けば迷子になるのは確定だ。
「現地の神殺しが対応なさったのではないかと。流石欧州、対応が素早いですね」
「それで呪力が消えたのか。じゃあ解決じゃん。とっとと帰ろう。……でも、なーんかひっかかるんだよなぁ」
そう言ってホテルへ戻る主従。あと五分でも相談を続けていたならば、不審者扱いされ警察の厄介になったであろうことを知らないで済んだのは、きっと幸運なのだろう。
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