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魔王の友を持つ魔王
§12 強運と凶運
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だったのさ。そもそも現地の有名物件とか観光名所なんてグーグル検索で調べた付け焼刃知識でしかないんだけど」

 何十枚もあろうかという分厚いA4サイズの紙の束を隣において一人木陰のベンチに座った黎斗。中身は欧州の名所一覧と観光ポイント。カバンの中にもそんなガイドブックが何十冊も入っている。一息ついて沈黙したのもほんの数秒、すぐに口から文句が飛び出る。カンピオーネたる黎斗が意思疎通に困ることはまずないが彼らがそんなことを知るわけがない。彼らは本当に「高校一年のテストが良ければ」現地でのガイドができると思ったのだろう。カンピオーネになる前に外国に行った経験がない、つまり日本語とセンター試験レベルの英語能力で海外旅行をしたことのない黎斗には本当にその程度の能力で大丈夫なのかわからない。一応、中学三年で一応日常会話くらいの英会話能力がつくとどこかで聞いたような気もする。それでもガイドを出来るとは思えないのだけれど。
 考えていて思ったのだが、そもそもここでは英語が使えるのだろうか? 今の自分が喋っているのは英語なのか? 考えなしに話していると自分が今何語を使っているのかわからなくなってしまう。相手との会話に支障こそないものの何語を喋っていたのか三人に聞かれても何処の言語か答えられないというのはどう考えても変な話だ。学校生活でも本を読んでいてどれがなんという言語で書かれているのかわからなくなることが多々発生するし。今回三人になんの言語か聞かれなかったのは幸いというほかない。他のカンピオーネもこんな風にどの言語を使っているのかわからなくなることがあるのだろうか?

「古今東西こんなことで頭を悩ませた神殺しは僕くらいのもんだろうな……」

 その言葉を聞いて理解したのかしてないのか、湖を泳ぐ白鳥がこちらを見つめる。同情するように鳴いた。つられたのか、近くにいた他の白鳥も鳴き始める。輪唱のような鳴き声は当然周囲の耳にも入る。

「………」

 ベンチに座る日本人と湖から顔をこちらへと向けた白鳥達の大合唱。これが美男or美女なら絵になるのだが、あいにく黎斗は冴えない顔の学生だ。白昼突如発生したある種異様な光景に注目が集まり始めるのはある種当然で。ビデオカメラを回す家族もちらほら見受けられる。黎斗としては見世物になったつもりはないのだけれど。

「……僕こんなキャラだっけなぁ」

 自分のことはこれまでお気楽極楽人間だと思っていたのだが、いつの間にこんな苦労性リーダータイプにクラスチェンジしたのだろうか。半ば諦めにも似た表情で、黎斗は買い物に飛び出したまま帰ってこない三人をひたすら待った。止めようとしたのだが「大丈夫だって! 黎斗の様子さっきからずっと見てたから要領はわかった」と言う三人に押し切られたのだ。さっきからジロジロと大衆の目にさらされている
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