第二話 灯影 月日(リーダー)
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女子学生の表情が明るくなった。月日は初めて彼女の安堵した顔を見た。
さて、と月日は目を閉じ、一眠りすることにした。元々非番の身。仕事を終えたのだから、それくらいは許されるだろう。
「あの…!」
許してもらえなかった。
「ん?」
「あなたは……いえ、あなた達は一体?」
そう言えば、そんな質問を受けていたなと、月日は記憶を遡る。
「あなたは、自分を風紀委員ではないと言いました。“能力”を使っていたので、警備員でもないと思います」
「へぇ、よく見てたね」
能力を使えるのは学生のみ。少ない発言から導き出された推測。「素晴らしい観察眼だ」と月日は褒め、質問に答えた。
「まず、俺達は『約束手形(ペナルティ・カード)』という組織の者だ」
「ペナルティ……カード?」
まったく聞き覚えのない名前にぽかん、とする女子学生。
構わず月日は説明を続ける。
「そう。細かい話は省くが、俺はそこのリーダーを勤めている」
よく解らないが、この人はその組織のトップであることだけは解った。
「俺達、約束手形は、学園都市の治安維持のために立ち上げた、謂わば自警団組織だ」
「でも、そんな組織団体が設立されたなんて話聞いたことないんですが……」
一般生徒には当然の疑問だろう。月日は『当たり前さ』と軽いノリで言った。
「なんたって非合法・無許可の組織なんだから」
「えぇ!?」
なんだかこのやり取りばかりだな、と月日は微笑する。
治安維持や取り締まりなどは風紀委員と警備員が行っている。月日達の様な存在は風紀委員や警備員からすれば、それを乱す無法者と大差ないのだ。
「いいんですか? そんなことをしてたら……」
「いいんだ。アイツらがいても傷付く奴は大勢いる。……それを無くしたくて、俺はこの組織を造ったんだ」
月日は女子学生の目を見据えて静かに言った。その目に罪の意識は微塵たりとも感じさせない。あるのは熱意。 この人は自分のしていることに誇りを持っているんだ、と彼女は思った。
「リーダー。もうすぐ到着します」
「解った」
終点が間近らしい。彼女達とは二度と会うことはないだろう。運が良ければ、また出会うこともあるだろう。
「さて、病院に到着する前に一つ言っておく」
「はい…」
「今晩あったことは、布団に入ったら忘れることだ。お互いにとってもそれが一番だ」
彼女はただ黙って聞く。この人が言っていることは正しい。
そう、もう一つの意味も含めて……。
車が静かに止まる。目的地である病院玄関前に停車。月日は男子学生を背負って降車する。あの医者の言う通り、何名かのスタッフがストレッチャーと
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