第二話 灯影 月日(リーダー)
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「…解ればいいんだよ」
『目が本気(マジ)だった。あれは真剣(マジ)でやろうとしている時の目だった』と後に男は語ったというがそれはまた別の話…。
車内で交わされる会話。普通なら友達同士の会話?にしか聞こえない。
「……………」
一人を除いては。
状況が急展開をくり返し、女子学生の脳ではその処理が追い付いていない。解っているのは何かとんでもない事に巻き込まれているということだけ。
「ところでリーダー。その二人どうします?」
「………ッ!!」
女子学生の肩がビクッ、と跳ねた。妥当な反応だろう。見知らぬ男に手を引かれ、訳も解らないまま車に連れ込まれ、挙句どうします?
女子学生の脳裏に過るのは、このあと待っているであろう最悪のシナリオ……。
震えだす体。涙で視界が歪んでいった。そんな女子学生の肩に暖かい物が乗る。
それは、月日の手。
「まず病院に行ってくれ!」
(え…!?)
彼女は耳を疑った。この状況からは考えられない一言だったからだ。
「病院ですか?」
「彼は怪我をしている。これ以上の理由が必要か?」
「了解」
運転手は指示に従い、目的地へと向かう。
次に月日は男子学生の容態を窺う。顔面を打ち付けられたことで額からは血が滲んでいる。呼吸は乱れていないことから気を失っているだけだと思うが、素人目での判断は危険だ。
「とりあえず、これで額を押さえててくれ」
月日は女子学生にハンカチを差し出す。彼女は戸惑いながらもそれを受け取り、男子学生の額にあてた。
しばらくすると車内に取り付けられた無線機から無機質なコール音が鳴った。 月日は無線機を取り、応対する。
「こちらリーダー。“ゴースト”か?」
『そうですよぉ。ゴーストですぅ』
ゴーストと呼ばれた無線の相手。それは、月日のケータイに電話してきた、あの少年だった。
「何だ? 対象は回収した。今は病院に向かっているところだ」
『“視て”ましたからぁ、いつもの病院には連絡を入れておきましたぁ。でぇ、応対した先生からの伝言で、『君、僕はボランティアで人を診ている訳じゃないんだよ?』とのことでしたぁ』
「承知してる。単純に最高の医師だからお願いしてるんだ。嫌なら断れと伝えとけ! あと一五分でそっちに着くともな」
『『断る訳ないだろ? 僕は医者なんだから。受け入れの準備はできているよ』とも言ってましたぁ』
どうやらお見通しのようだ。「あのナース好きのオッサンめ……」と悪態をつく月日。「解った」と言って無線を切った。
「聞いての通り。病院側は受け入れるらしい。一流の医者がいるから、大丈夫だろう」
「本当ですか…!?」
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