§??? 番外編《短編集》
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ふと時計を眺めれば、もう日付が変わってしまう。階段をのぼるのに一時間以上使っていたのか。寝るよう説得してくれたエルに小声で礼を言い、防音術式を展開し、気配を殺して移動する。こうでもしないとせっかく眠ったあの野生娘を起こしてしまう。
「あとで化学最終確認を……」
そう呟く黎斗の顔は幽鬼のようだったと、後にエルは語っている。
「よう黎……どーしたんだ?」
「ゃぁ」
誰かと思えば草薙護堂。一瞬誰かわからなかった。頭を活性化させなければ。このままでは非常に不味い。
「……おい大丈夫かお前。今日はなんかクラスの奴ら眠そうな奴がいっぱいいるけどお前特に重症だぞ?」
「多分ダイジョブダイジョブ一限数学か……」
すれ違う生徒が皆怯えている。そこまで顔酷いだろうか? 恵那やエルが起きる前に家を飛び出したのは失敗だったようだ。
「席につけー、問題配るぞー」
チャイムと前後して教師が入ってくる。数学は今回の範囲なら楽勝だ。
「はじめー」
教師の声と共に用紙を表に。眠い。まず問題を一通り眺める。眠い。大丈夫だ、問題ない。眠い。この程度ならすぐ終わらせて睡眠時間にしよう。眠・・・い。まずは・・・平方完・・・成を。
そこで黎斗の意識は途切れた。
「……」
もう一度、名前が間違っていないか確認する。間違っていない。ということはこの用紙は僕のものだ。頬を抓ってみる。痛い。ということは間違いなく現実だ。
水羽黎斗、数学零点。開始直後の爆睡により白紙提出。問題解く姿勢で爆睡した結果、教師もクラスメートも彼の睡眠に気付かなかったらしい。回収の時に気付きそうなものだがなんで気付いてくれなかったのだろう。結果、彼は一限数学から始まるその日のテスト全て零点という人生初の経験をしてしまった。
「護堂、どうだった? この私が直々に教えてあげたんだからそれなりに出来たわよね?」
「あぁ、ありがとう。エリカのおかげで今回のテストは九割いった」
後ろで何か声が聞こえる。神様、この展開は理不尽すぎはしませんか?
「うわああああああああああああああああああああ!!!」
「ど、どうした黎斗!?」
「ごどー!! お前ー!!」
ワケも分からず追われる護堂と発狂して追いかける黎斗。血涙大戦争の情報をどこからか入手していたエリカだけが、魔性の笑みで二人を見ていた。
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