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魔王の友を持つ魔王
§??? 番外編《短編集》
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「更なる天罰を望むか?」

 打ちひしがれる黎斗を尻目に、彼の演説は佳境に入る。

「糞のような天罰を望むか?」

「「「天罰を!! 天罰を!! 天罰を!!」」」

「よろしい。ならば天罰だ」

 ヒートアップしていく場内。もうだれにも止められない。黎斗も嫉妬することはするが流石にこのレベルになるとついていける気がしない。デモ行進やらかしそうな勢いだ。おそるべし、草薙勢力。

「誰か止めて……」

 神に祈る彼に、救いの手が差し伸べられる。もっとも、悪魔の手だけれども。

「こらー!! 貴様ら、何をやっている!!」

 風紀委員と体育科教師の強制介入。こちらの人数が多くテンションが高いことを警戒したためか、いつのまにやら風紀委員が包囲網を敷いていた。体育館を使ってこんなことしていれば当然か。怒られるのはいやだが三人を止められなかった責任を甘んじて受けとめよう、そう覚悟した黎斗だったが、事態は彼の予想の遥か斜め上に向かっていく。

「おのれ、草薙のやつ教師と風紀委員まで味方につけたか!! 全軍、突撃!!」

 名波の声は、黎斗の思考を停止させるのに十分で。

「……ゑ?」

 その一瞬が、明暗を分けた。ここで名波を止めなかったことが、城南高校史上初の学生運動(のようなもの)を引き起こしてしまうなんて、千年の時を生きた黎斗といえども予想出来るわけなどない。

「草薙に独占された美少女を解放するという崇高な使命を背負いし同志よ、敵は強大だが立ち向かうぞ! 我らに負けは許されない!!」

「「「応!!!」」」

 ここに、一人の高校生への嫉妬から始まった、教師陣&風紀委員と生徒達(八割男子)の大乱闘という前代未聞の珍事件、通称「血涙大戦争」が幕を開けたのだ。夜七時まで続いたこの休日に起きた抗争は、生徒側の敗北で幕を下ろした。この日来校していなかった生徒には厳重に伏せられ関係者の心の奥にこの事件は秘められた。最後の方は教師陣も「俺だってなぁ!!」などと泣いていたような気もするが気のせいだ。絶対に。
 参加した生徒は、全員が正座と反省文五枚。富の独占に教師側にも思うところがあったのだろうか。主犯のうちの一人に認定されてしまった黎斗が解放されたのは、午後十時のこと。





「エライ目にあった……」

 長時間の正座で足が痺れるせいで歩くことすらままならない。担任にアパート前まで送ってもらった後、手すりを使いながら必死に階段を上がっていく。背中の荷物が重い。きっと青チャート一冊で十分なのに三冊も持ってきたせいだ。

「た、ただいま……」

「敗残兵ですね、マスター。恵那さんさっきまで起きて待っていらっしゃいましたが寝てもらいました。お静かに」

「りょーかい」

 
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