無印編
第十八話 裏 後 (アルフ、プレシア、なのは)
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いわけはなかった。同時に先ほどの言葉が嘘だと分かった。なにが敵じゃない、だ。なのはにとってジュエルシードを狙う人間は誰だって敵だった。だから、なのはは無言でディバインバスターの準備をする。集束される魔力が杖の先端に集う。だが、女性はその様子に一切怯えることなく言葉を続けた。
「なにも、ただでではないわ。ねえ、あなた―――」
そこで言葉を切り、女性はなのはを誘うような妖艶な笑みを浮かべる。
「あなたと彼だけの世界が欲しいとは思わない?」
その言葉に思わずディバインバスターの魔法をキャンセルしてしまう。なぜなら、その言葉は先ほどまでなのはが考えていたことと同質のことだったからだ。
「ショウくんと私だけの世界?」
なのはが魔法をキャンセルし、呟いたのを見て意を得たと思ったのか、女性は笑みを強めてさらに言葉を続ける。
「そう、あなたと彼だけの二人の世界」
それは、実に甘美な誘いだった。翔太となのはの二人だけの世界。それが実現できれば、どれだけ嬉しいだろうか。なのはだけの翔太。翔太だけのなのは。それが実現する世界なのだから。なのはが欲しいと思ったものがすべて手に入る世界を彼女は提案してきた。だが、とすぐに思う。
「無理だよ。そんなこと―――」
そんな方法があるならなのはだって探している。だが、世界を作るなんて不可能だ。翔太の周りにいる人間をいなくなってしまわせることさえも不可能なのだから。だが、なのはの呟きを受けてまた女性は愉快、愉快といわんばかりに笑みをさらに強め、続けた。
「不可能ではないわ。この大魔導師の名を持つ私ならね」
「大魔導師?」
聞き覚えのない言葉だが、なんとなくすごいということは分かった。彼女から迸る魔力はなのはよりもはるかに上だと言うことが分かったし、なのはのことを魔導師と呼んだユーノというフェレットの言葉を借りるなら自分よりも高みにいて魔法を使える女性なのだろう。
―――魔法。
なのはが欲しいものを、望んだものを与えてくれた力。なのはが縋るべき最後の希望。それをさらに上手に使える大魔導師という存在。
もしかしたら、という思いがなのはの中で生まれるのも無理もない話だった。
「あなたと彼だけの世界が欲しいとは思わない?」
無言のなのはを見下して、大魔導師が口の端を吊り上げて嗤う。彼女の言葉は、なのはにとって甘い、甘い、甘い誘惑だった。
「欲しいとは思わない? 誰にも邪魔されず。あなたと彼だけのたった二人だけの世界が」
大魔導師は嗤う。まるでイヴに知恵の実を食べるように唆す蛇のように。
「また、ジュエルシードが集まった頃に来るわ。小さな魔導師さん」
それだけを言い残して大魔導師は消えた。
「私
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