無印編
第十八話 裏 中 (アリサ、すずか、恭也)
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い出せなかった。
「私の力の一つで魔眼よ。今は古典的に記憶を失わせてみたんだけど、どう? 信じられそう」
「―――信じるしかないだろうな」
古典的だったが、ここまで正確に忘れ去られたら認めるしかなかった。そして、丁度、恭也が降参するように忍の発言を認めた後、部屋の入り口付近に空いている小さな窓口から二つのグラスが急に出てきた。歌っている最中に邪魔しないためのシステムで、ここに勝手にジュースなどを置いていくのだ。二つのグラスの中身は、一つは恭也が頼んだウーロン茶、そしてもう一つは、忍が頼んだアイスコーヒーだった。
先ほどは思い出せなかった頼んだ飲み物だったが、もう一つのグラスがアイスコーヒーだと認識した瞬間、まるで風船が割れて風船の中に隠されたものが分かったようにはっきりと忍の頼んだものを思い出したのだ。
「……なるほどな」
「思い出した? さっきは簡単だったから切欠があれば、すぐに思い出せるタイプの魔眼なの」
そういいながら、恭也が持ってきたアイスコーヒーに口をつける。
「それで、恭也も私たちのことを知っちゃったから答えて欲しいの」
「何を?」
「………恭也は、私たちのこと怖いと思う?」
恭也は少し考えたが、それでも忍の問いには首を横に振って答えた。
確かに最初に言われたときは驚いたかもしれない。しかし、それは当たり前だ。友人が吸血鬼だというのだから。驚かないほうがどうかしている。だが、それだけだ。彼女が恐ろしいとは思わなかったし、ああ、そんなものもいるんだ、程度の認識だった。これが普通なのかどうか分からない。もしかしたら、自分も裏といわれる世界に片足を突っ込んでいたせいなのかもしれない。だが、どんな理由にせよ恭也は忍のことが怖い、恐ろしいと思うことはなかった。
「よかった」
ほっ、と安堵の息を吐く忍。そういえば、先ほど、恭也に問いかけたとき、忍が瞳が恐怖で揺れていたような気がする。もっとも、彼女が拒絶されるようなことを告白した後なのだから、当然なのかもしれない。
「それで、ここからが本題なんだけど……」
「何だ?」
昨日のことはすべて聞いた気がする。だが、忍はこれが本題ではないという。一体他になにが残っていただろうか、と恭也が頭をめぐらせ、答えにたどり着く前に忍が先に口を開いた。
「私たちのことを話した相手には、私たちのことを話さないように契約を結んでもらうんだけど―――」
「大丈夫だ。俺は誰にも話さないさ」
忍が話したことが明らかに秘密に値することは分かっている。翔太のことを聞いたとき、彼女は夜の一族のことを話してくれた。それが自分への信頼から来るものだと分かっている以上、誰にも話すつもりはなく、墓まで持っていくべきだと
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