無印編
第十八話 裏 中 (アリサ、すずか、恭也)
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のはが口を開けば、ショウくんが、ショウくんが、と彼の名前を連呼するのは、いささか気にかかってはいるが。
大学でであった忍にそのことを切り出すと、連れてこられたのは、大学の近くにあるカラオケハウス。そこを二時間で部屋を取った。どうしてこんなところに? と思ったが、カラオケハウスというのは防音が聞いているうえに個室で、さらに防音であっても多少は漏れ聞こえる音楽の所為で内緒の話をするのに都合がいい場所なのだ。
流行のポップミュージックのカラオケを背景に聞いた話はおいそれと外で簡単に話せる内容でないことは確かだった。
なにせ、月村忍が夜の一族といわれる一族の一員で、吸血鬼だというのだから。昨日の件も彼女の妹のすずかが翔太の血を吸ったということで緊急的に呼び出したという話だった。
彼女の言うことに整合性はある。翔太は自分で歩けないほどに体調不良だったし、それを貧血と結論付けると、血を吸われたというのは、荒唐無稽ではあるが、理にかなう説明だ。
だが、しかし――――
「いまいち信じられない?」
「ああ」
正直な感想だ。いきなりそんなことを言われても信じられるはずがなかった。何か隠していて誤魔化そうとしているんじゃないか、と思えるぐらいだ。友人を疑うのは気分が悪いと思いながらも、心は冷静に忍を疑っていた。もしかしたら、恭也の中に流れる裏の暗殺者としての血がそうさせるのかもしれない。
だが、そのことに気づきながらも忍は嫌な顔せず、どうしよう、と悩んでいた。
「実際に血を吸って見せるのがいいんでしょうけど……嫌よね?」
「当たり前だ」
血というのは実は人体にとっては毒薬である。コップの半分ほどの血を飲んでしまえば、胃の中身をすべて吐き出してしまうほどに。だから、恭也の血を実際に吸わせれば、それを栄養素として扱ってしまえば、忍の言うことを信じられるのだが、さすがに血を吸われるのは勘弁してもらいたいところだった。
「だったら、もう一つのほうでいきましょう」
「もう一つ?」
「そうね、恭也。私の目を見て」
つぅ、と顔を近づける忍。美女といってもいいほどに整った顔が近づいてきて少し戸惑ったが、それでも言われるがままに目を見つめる。忍の瞳が一瞬、血のような赤に変わったと思ったのは気のせいだろうか。そして、その気のせいを感じた次の瞬間にまた忍は元の位置に戻った。
「それじゃ、恭也。私が頼んだ飲み物は何でしょう?」
「何って……」
あれ? と自分でも思った。忍がすべてを話し終えた後、喉が渇いたと飲み物を頼んだのだ。電話でカウンターに頼んだのは自分で、恭也はウーロン茶を頼み忍は―――思い出せなかった。電話をかけて何かを頼んだところまでは覚えている。だが、その内容が思
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