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リリカルってなんですか?
無印編
第十八話 裏 中 (アリサ、すずか、恭也)
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う意味?」

 アリサの問いにアリサの母親は、一瞬、きょとんとした後、声を出して笑い、アリサの頭を愛しげに撫でる。食事中なのに、と思いながらも母親に頭を撫でられるなんて何時ぶりだろうか、とアリサは母親の手を受け入れていた。やがて、母親はアリサから手を離し、笑いながら言う。

「あはははは、アリサにはまだ早かったかしら? すずかちゃんはね、翔太くんのことが特別に好きなのよ。そして、それを恋っていうのよ」

「特別な好き? 恋?」

「そうよ、綺麗な女になるには必須事項だから覚えておきなさい」

 アリサには母親のやけに愛いげなものを見守るような柔らかい笑みが印象的だった。

 夕食後、お風呂も済ませてあとは寝るだけとなったアリサはベットに飛び込んでうつ伏せになりながら夕食のときの母親の言葉を考えていた。

「特別な……好き? 恋?」

 定義は分かった。だが、それがどんなものなのか分からない。理解できなかった。母親がいう恋というものはあんなにも人を変えてしまうものなのだろうか。そして、すずかの変化を受け入れていた翔太も『恋』を理解していたのだろうか。

 分からない、分からない、分からない――――

 分からないことがアリサにとって苛立たしくて、不満で、そして、不安だった。

 ―――特別な好き。恋。

 それらを分かっているすずかと翔太がアリサとは違う別の関係になったような気がして。二人が理解できているものが理解できない自分がいて。二人から置いていかれたような気がして。

 アリサは胸に漠然とした不安を抱いていた。それが、胸の小さな痛みだった。

「……でも、変わらないわよね」

 そう、たとえ二人の関係が変わったとしても、アリサとすずかの、アリサと翔太の関係は変わらないはずだ。親友という関係は変わらないはずだ。変わってほしくない。

 翔太とすずかとアリサ。三人の関係が変わってほしくない。それが、それだけがアリサの願いだった。



  ◇  ◇  ◇



 月村すずかは、晴れ晴れとした気分で教室の窓の向こうに見える青空を見ていた。

 「気持ちが変われば、見える風景も変わる」とは、いつか読んだ本の一節だが、本当のことだと実感した。昨日までは、明るい青空を見るたびに自分の中にある呪いを消し去ってほしいと思っていたのに、今は素直な気持ちで晴れた青空を見ることができるのだから。

 彼女は、今朝、昨日の大事件を起こしてしまった翔太に校舎裏で素直に頭を下げた。昨日は確かに許してもらえるとは言っていたが、血を倒れるほどに吸ってしまったのだ。面と向かって謝らなければ気がすまない。なにより、まだすずかの心の中には怯えがあった。昨日はあまりの出来事に気が動転して、思わず許してしまっ
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