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リリカルってなんですか?
無印編
第十八話 裏 前 (アルフ、フェイト、プレシア)
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。今まで、母さんの笑ってくれるように、母さんが自慢できるような娘になれるように、と頑張ってきたのに。たった今、プレシアはそのフェイトの思いをすべて否定した。目の前で眠っているような少女に劣るとはっきり口にした。

 フェイトの記憶の中に残る母さんはそんなことは言わなかった。いつでも優しく笑って、フェイトにも優しく接してくれて、愛してくれた。いや、だが、その記憶さえも贋物。アリシアという目の前の少女の中から抜き出されたものに過ぎない。

 ―――なら、私は何を信じたらいいんだろう?

 もはやはっきりした言葉を口に出すことすら叶わないフェイトの思考回路。彼女の思考回路は、もはやどうして? 私は何? という疑問と今まで信じていたプレシアから告げられる心を削る言葉に絶望と悲しみしか感じていなかった。

「ねえ、フェイト。あなたは私の娘なんかじゃないの。アリシアが蘇るまでの間、私が慰みに使うアリシアによく似たお人形。それ以外の何者でもないの」

 この言葉でフェイトの『心』という鏡はパリンという高い音を立てて粉々に砕け散った。

 今まで母親であるプレシアに認められるために、ただそれだけのために生きてきたフェイトが張本人であるプレシアから存在を否定された。存在意義を失った心が壊れるのも無理もない話しだった。

「でもね、主の言うとおり踊らないお人形はいらないの。ねえ、分かってる? フェイト、あなたに言ってるのよ。私がジュエルシードを手に入れさせるために使わせた魔力も時間もすべてが無駄。あなたに母さんと呼ばれるたびに虫唾が走るのを我慢したのも無駄。我慢してあなたを娘としてあなたの名前を呼ぶのも無駄。ああ、違ったわ。あなたの名前はただのあなたを作ったプロジェクト名よ。名前ですらないわね」

 まるで、粉々になったガラス片をさらに靴で踏みつけて粉にするようにプレシアの言葉はフェイトの中に響いてくる。聞きたくなかった。耳をふさぎたかった。これ以上、心を壊さないで、と叫びたかった。
 だが、それさえも億劫なほどにフェイトの中は空虚だった。心というガラスを割られた中身は空っぽだった。

「いえ、お人形としてすら踊れないなら、あなたはもはやお人形以下ね。ただのゴミだわ」

 ―――あはははは、私、ゴミだって……。

 もはや、なんの感慨もなく、フェイトは自己の評価を受け入れた。プレシアからの言葉はもはや空虚を埋めることなく、ただ風のように通り抜けていくだけだった。

 その言葉を聞いてフェイトは身体に力を入れることも億劫になり、ばたりと倒れた。鞭で打たれた傷口が熱を持っており、ひんやりとつめたい床だけが、フェイトを癒してくれそうな気がした。

「ゴミが。ここは、アリシアが眠る場所よ。汚れるでしょうが」

 ―――もう、どう
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