無印編
第十八話 裏 前 (アルフ、フェイト、プレシア)
[8/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
一つも回収できなかったのだから。だから、フェイトは甘んじてプレシアからのおしおきを受けた。
これが終わった後、ジュエルシードをたくさん回収すれば、きっと母さんは優しく笑ってくれるから。私にもきっと優しくしてくるから。アルフにもきっと優しくしてくるから。
そう信じていた。だが、その信じていたものは目の前の光景で粉々に砕け散っていた。
「……あ……あ……わ、私?」
目の前に浮かぶ水槽の中の少女。それは、彼女が姿見で見る自分と瓜二つだった。だが、その言葉を母親であるプレシアは鬼の形相で持って否定した。
「馬鹿なこと言わないでっ! あなたのような失敗作とアリシアを一緒にしないでっ!!」
「アリ……シア?」
フェイトが初めて聞く名前だった。あの少女の名前だろうか。だが、あの少女と自分が同じ姿をしている理由は一体なんだろう? 様々な疑問がフェイトの中で生まれてくる。だが、そのことを聞く前にプレシアが口を開くほうが早かった。そのとき、プレシアはフェイトが記憶の中を探って見た事ないほどに歪んで嗤っていた。
「まだ分からないの? あなたは私が作ったアリシアの贋物。アリシアを蘇らせようとした私が作った失敗作よ」
「にせ、もの? しっぱいさく?」
フェイトはプレシアが何を言っているか理解できなかった。いや、理解しているが、理解したくなかったといったほうが正解かもしれない。彼女の中に眠る本能ともいうべき部分が、プレシアの言う言葉を理解することを拒否していた。
だが、フェイトが拒否しようとプレシアの言葉は止まらない。
「そうよ。せっかく、あなたにはアリシアの記憶をあげたのに全然ダメだった。だから、失敗作」
プレシアが口にした言葉は、つまり、フェイトという人間の全否定だった。今までフェイトが信じてきたものの全否定だった。
それを理解した、理解してしまった瞬間、フェイトの心の中の床がすべて崩れ落ちたような錯覚を感じてしまう。
今、プレシアがいった言葉を全部嘘だといってほしかった。信じたくなかった。拒否したかった。
だが、そんなフェイトの心を弄ぶかのようにプレシアは言葉を綴った。
「アリシアはもっと優しく笑ってくれた」
―――私は母さんの前で優しく笑えなかったのか。
「アリシアは時々、我侭も言ったけれど、私のいうことをよく聞いてくれた」
―――私は母さんの言うことを聞けなかったのだろうか。
「アリシアは私にもっと優しかった」
―――私は母さんに優しくなかったのだろうか。
プレシアがアリシアというフェイトが知らない少女と比べるたびにフェイトの中の何かが少しずつ削られていくように感じられた。
それは、フェイトにとっての存在意義
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ