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リリカルってなんですか?
無印編
第十八話 裏 前 (アルフ、フェイト、プレシア)
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そんな場合も考えてフェイトを一流の魔導師に育ててきたのだ。

 だが、フェイトが告げた結果は、それをすべて無駄にするような結果だった。プレシアが『彼女』のために、『彼女』のためだけに使うはずだった時間と魔力を使ってまで育てた結果だった。
 もしかしたら、プレシアはフェイトにそれなりの期待をしていたのかもしれない。『彼女』と顔立ちが同じだから。声が同じだから。瞳が同じだから。外見は同じだから。それでこそ、お人形のように。だから、彼女の面影を追ってプレシアはフェイトに期待していたのかもしれない。

 しかしながら、その期待も肩透かしだ。しょせん、失敗作は失敗作でしかないことの証明にしかならなかったというだけの話だ。
 その結論に達したとき、プレシアは鞭を振るのをやめていた。

 もう終わった? と伺うように身体中に赤く腫れた筋のような鞭の痕を残しながらフェイトは顔を上げる。そんな彼女の前髪を近づいたプレシアはがしっと鷲掴みにするとそのまま彼女の体を荷物のように引きずる。
 前髪を無理矢理引っ張られるためだろう。痛みを堪えるような表情をしながらもフェイトはプレシアが引っ張る方向に向かって足を動かしていた。
 プレシアは痛みを堪えるような表情をしているフェイトを一切気にする様子はなかった。なぜなから、もはやプレシアにとってフェイトは失敗作という烙印を押された本当の人形でしかないのだから。

 これからプレシアが連れて行こうと思っている場所は、彼女に真実を告げるための場所。本当は、彼女にとって神聖な場所にこんな失敗作を連れて行くのは気が咎める。だが、このまま失敗作を捨てるのはプレシアの気が収まらない。失敗作を育てるためにプレシアは失敗作から母さん呼ばわりされるのを我慢してきたわけではないのだ。

 プレシアは、フェイトの勘違いした瞳が嫌いだった。母さんと呼びかける声が嫌いだった。愛おしい彼女に似ている顔立ちが嫌いだった。だが、それでも彼女のためと我慢してきたのだ。しかしながら、その我慢も先ほど失敗作が、自らを失敗作と証明したところで限界を超えた。
 このまま掴んだ手の先で痛みに顔をゆがめている失敗作を捨ててしまうのが正解なのだろう。だが、プレシアは少しでも彼女が勘違いしたままなのが許せなかった。フェイトがプレシアの娘だと思っているのが許せなかった。なぜなら、プレシアの娘は『彼女』一人だけなのだから。

 だから、これから向かう場所は、プレシアにとって神聖な場所だが、フェイトの勘違いを正すための場所なのだ。失敗作を失敗作だと自覚させる場所だ。

 フェイトの髪の毛を引っ張ったまま誘導すること五分程度。いつもプレシアがいる部屋のさらに奥にフェイトを誘導する。ここはフェイトを一度も入れたことがない場所。入らないように言いつけている場所。
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