無印編
第十八話 裏 前 (アルフ、フェイト、プレシア)
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に喜びを感じる部分が多いときもあれば、一つもジュエルシードが得られなかった、と告げて悲しむ母親を思うと不安になる部分もある。
だから、それらの不安な部分を和らげようとフェイトは、使い魔のアルフと一緒に買い物に行っていた。
「しかし、こんなものであの人が喜ぶかね?」
フェイトが大切そうに持っていた袋を持ち上げ、不思議そうな顔をする。
袋の中身は、近所で有名なお菓子屋さんで買ったシュークリームだ。おいしいと評判だから、きっと母さんも気に入るはずとフェイトが時の庭園に行く前に買いに行ったものである。
使い魔であるアルフはどうやら母親のことが嫌いらしい。それがフェイトにとっては悲しかった。自分は、こんなに母親のことが大好きなのに。アルフのことも大好きだからこそ、フェイトは母親のことも大好きになってほしかった。
―――今回のことで少しでもアルフが母さんのこと好きになってくれたら良いな。
そう思いながら、フェイトは母親が待つ時の庭園への扉を開いた。
◇ ◇ ◇
プレシア・テスタロッサは、目の前で震えている少女が口にした言葉が信じられなかった。そう、いくら失敗作とはいえ、そこまで酷いはずがない。ただの聞き間違いだろうと思い、もう一度、聞き返す。
「ごめんなさい、フェイト。母さん、ちょっと聞こえなかったみたい。もう一度、答えてくれるかしら? ジュエルシードはどうしたの?」
尋ねるプレシア。だが、目の前の流れるような金髪をツインテールにした少女はオドオドと俯き、身体を震わせるばかりで、何も答えない。いや、答えてはいる。かすかに口を開いているのが分かる。だが、その声は聞こえない。聞こえるほど大きな声ではない。
「聞こえないわ。フェイト」
ツカツカと近寄ると、フェイトと呼んだ少女の顎に手を当てて無理矢理、俯いていた顔を上に向け、まっすぐフェイトの目を覗き込むようにしてもう一度問いかける。
「ジュエルシードはどうしたの?」
しばらく覗き込むが、フェイトの瞳は左右に振れ、不安に揺れていたが、やがてゆるゆると口を開いた。
「……一つもありません」
ようやくフェイトが口にした言葉の意味を理解した瞬間、反射的にプレシアの手は動いていた。
パシィンと頬を叩く音がプレシアとフェイトがいる空間に響き渡る。反射的に動いた手で力の限り叩いた結果、成人女性とはいえ十に満たない幼い女の子が耐え切れるはずもない。プレシアが叩いた衝撃で、フェイトは後ろに飛ばされ、床に倒れこむが、すぐに女の子座りで叩かれたせいで赤く腫れた頬を押さえながら、何かをぶつぶつと呟いていた。
一方、思わず反射的とはいえ、全力を出して叩いてしまったプレシアは、肩で息をしてい
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