無印編
第十八話 裏 前 (アルフ、フェイト、プレシア)
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アルフは、言いようのない怒りを抑えながら、主であるフェイトの湿布を変えていた。
「いたっ」
「ああ、ごめんよ、フェイト」
湿布を変えている途中、怪我をしている部分に触れてしまったのだろう。フェイトが痛そうな素振りを見せ、アルフが申し訳なさそうな声を挙げる。フェイトに湿布を張っている部分は、一番手ひどくやられた右肩。そのほかの部分も打ち身やら擦り傷やら満身創痍だったが、一番酷い右肩に比べればそれほど酷いとはいえなかった。
一番手ひどくやられた右肩は、バリアジャケットが功を奏したのか骨に異常はなかったが、それでも相当打ち付けられたようで、未だに肩より上に腕が上がらない状態だった。
「なあ、フェイト……あんな鬼婆のためにまだ続けるのかい? こんな怪我しても連絡一つよこしてこないヤツのためにフェイトが頑張ることないって。それにまたあの白いヤツに遭遇したら、今度はこんな怪我じゃすまいかもしれないよ。ねえ、二人で逃げようよ。あたしは、フェイトがいてくれればいいんだから」
怪我をしているフェイトの肩に包帯を巻きながらアルフが進言する。
主であるフェイトが怪我をしてもジュエルシード探しを諦めないのは彼女の母親のためだ。だが、アルフはフェイトの母親―――プレシア・テスタロッサ―――が好きではなかった。フェイトに魔法の勉強を強要したにも関わらず、寂しがっているフェイトに顔さえ見せない母親。そんな母親のためにフェイトが傷ついてまで何かする必要があるとは到底思えなかった。
アルフの進言を聞いたフェイトは少し困ったような顔をしてアルフの頭を撫でる。元来が狼だったこともあってだろうか、頭を撫でられるのが気持ちいいアルフは目を細めてフェイトの手を受け入れていた。
「ごめんね、私がしっかりしないからアルフに心配掛けちゃう」
アルフに向けていた視線を少し上の棚に向けるフェイト。そこには一つの写真たてがあった。フェイトの母親であるプレシアと今のフェイトよりも幼い感じの少女が並んで立って写っている。その写真に写ったプレシアは少女の肩に手を置き、穏やかに微笑んでいて、傍目から見ても娘を愛している母親だと分かる。
その写真を一瞥してフェイトは、でも―――と続けた。
「私は母さんの願いを叶えてあげたいんだ。母さんのためにも、そして、多分、私のためにも」
それはアルフも分かっている。フェイトが彼女の母親の笑みをもう一度取り戻すために、そのために必死に頑張っていることを。夜、眠る時間も削って広域探査を行い、ジュエルシードを必死に探し、慣れない地球での生活を送っていることを。
だが、そんなに必死に頑張っているフェイトだったが成果はまったく上がっていなかった。現在、フェイトの手持ちのジュエルシードは0個
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