無印編
第十七話 裏 (すずか、なのは、忍)
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月村すずかは、姉の言葉が信じられなかった。
「え……? 嘘だよね、お姉ちゃん」
嘘だといってほしかった。冗談よ、と苦笑交じりで言ってほしかった。だが、すずかの願いは届かない。真剣な顔をして姉の忍は首を左右に振ったからだ。
「どうしてっ!? どうして、ショウくんに私たちのこと話すなんてっ!」
ことの始まりは、お風呂にも入って本でも読んで寝ようか、という時間帯に忍に呼ばれたことからだった。忍に呼ばれたすずかは最初は、軽い気持ちで彼女の前に座ったのだが、話が進んでいくにつれて簡単に聞き逃せる事態ではないことに気づいた。
なにせ会話の内容は、彼女の中では禁忌であった自分の一族について、たった二人しかいない友人の一人である蔵元翔太に話すということなのだから。それが何を意味するのか、姉に分からないはずはないのに。
「すずか、落ち着きなさい。さっきから言ってるけど、ショウくんもこちら側の可能性が高いのよ。それを確かめるために話すだけよ」
「でも、絶対じゃないんでしょう?」
「それは……」
忍が言いよどむ。もしも、翔太がはっきりとすずかたちのような裏側に所属する人間なら、所属している組織などが詳細にわかっているはずだ。月村、否、夜の一族というのは裏の世界では頂点に近い存在であるのだから。だが、忍はそれを一言も口にしない。ただ、裏側に属する人間である可能性が高いといっているだけだ。もしかしたら、白である可能性もあるのだ。
すずかにとって蔵元翔太は、たった二人しかいない友人の一人。人と関わることを避けていたすずかにできた、しかも、自分のことを受け入れてほしいと思っていた人物なのだ。このまま彼と付き合っていけば、自分のことを話すこともあったかもしれない。彼と関係を深めるにはすずかの一族の問題は避けては通れないのだから。
だが、それもすずかの想像の中では、ずっとずっと先の話であるはずだった。少なくとも小学生の間はまったく関係のない話だったはずだ。それが、突然、降って湧いた話だ。すずかが拒否反応を起こすのも無理のない話だった。
その後も二人で言い合うが、話は平行線のままだった。
片や月村が裏側を治めている海鳴の街で起きていることを正確に把握したいという夜の一族としての立場を取る忍とせっかくできたお友達を万が一にも失いたくないすずか。どちらも譲らず、妥協点を見出せず、平行線が続く。
「お姉ちゃんのバカッ!!」
いくら話してもこちらの言い分を理解してくれない姉に憤っていつもは使わないような言葉を捨て台詞にすずかはその話し合いの場を後にした。後ろから忍の待ちなさいっ! という言葉が聞こえたが、そんなもので制止させられることはなかった。
話し合いの場を後にしたすずかは自分の部屋に
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