無印編
第十七話 裏 (すずか、なのは、忍)
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局という組織に対するカードね。時空すら超えるんですもの、技術もすごいんでしょうね」
つまり、交渉の糸口にしようというわけだ。迷惑料ともいう。
現状、夜の一族が経営するグループにおいて技術の知的財産というのは出し惜しみするほどに存在している。メイドをしているノエルという機械人形一つ見てもそこに込められた技術など現在使われている技術とは天と地ほどの差があることが分かる。だが、持っていて損はない。何よりも技術という点から見れば、忍も興味深いところではあった。
「それにファーストコンタクトは大切よ」
「なるほどね。了解したわ」
やはり夜の一族でも幹部に近い人は考えが違うわ、と一手一手に対する考え方の違いを見せられて降参とばかりにもろ手を挙げるしかない忍だった。
「あ、ところで、お詫びの品ってなんだったの?」
不意に思い出した翔太との会話の中の一言。だが、忍はそんなことは初耳だった。だから、聞こうとずっと思っていたのだ。そして、さくらからの答えは―――
「大人なら現金が一番なんでしょうけどね、彼は断わりそうだったから、物にしておくわ」
「へ〜、で、何を送るつもりなの?」
「彼も血が足りないでしょうからね、最高級のレバーを送るわ」
◇ ◇ ◇
翔太にまた明日の言葉を告げたすずかはベットにうつ伏せに飛び込んだ。
「あは、あははははは」
先ほどの会話を思い出したのか、思わず笑みがこみ上げてくるすずか。
もう終わったと思っていた。翔太の記憶は消され、明日からはただの赤の他人として接するのだと思っていた。だから、忍に事情を話してからは、ずっと一人でベットに蹲って絶望のうちに泣いていた。悲しくて、翔太に申し訳なくて、明日からが怖くて、それらを思うだけで涙が止まらなかった。
だが、状況は翔太がすずかの部屋を訪ねてきたときから変わってしまった。なぜそうなったのか分からない。だが、確かに翔太は部屋にやってきた。いつもの静かな落ち着いた声と共に。
一瞬、自分が見ている夢だと思っていた。だが、違った。手の甲を抓ってみても痛かったし、気配は確かに感じられたから。信じられなかったが、それでも確かに翔太はそこにいた。しかも、すずかにとってさらに信じられない言葉を口にした。
―――僕はすずかちゃんが怖くない。
自分が魔法使いという冗談まで用意してすずかを受け入れてくれた。
嬉しかった。秘密が、自分が吸血鬼だということがばれてしまったら、きっと拒絶されると思っていたから。ずっとそう思っていたから。だが、その考えを翔太が真正面から壊してくれた。
―――また明日。
その言葉がまだすずかの中に残っている。明日からも今日と同じ日々
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