無印編
第十七話 裏 (すずか、なのは、忍)
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させ、杖を片手に窓から飛び出そうとした。あの場所は、吸血鬼というバケモノたちの巣穴。翔太がその場にいたらどんな危害を与えられるか分からない。しかも、既に翔太はあのすずかといわれていた女の子―――なのはの中では姿と名前が一致しなかった―――に血を吸われた後だという。
―――許せない。
そのことを聞いて燃え上がったのは憤怒の炎だ。なのはにとって翔太はかけがえのない友人であり、なのはを唯一認めてくれる人なのだ。そんな翔太を傷つけられて、怒らないわけがない。
今すぐにでも空を飛んで月村家へ向かおうとしたなのはの足を止めたのは意外にもその翔太だった。
翔太が月村家からの謝罪を受け入れたからだ。それは翔太が月村家を許すといっていることに他ならない。
さすが、ショウくん、と翔太の器の大きさを賞賛する気持ちがある一方で、強制的に連れて行かれ、相手のフィールドで断われず、無理矢理言わされているのではないか、騙されているのではないか、と疑念が沸いてくる。だからこそ、動けなかった。前者の場合、ここでなのはの力を振るうことは、翔太の決定を反故することを意味しているからだ。
しかも、前者であることを裏付けるように翔太は、彼女たちと笑って会談している。
これで本当に今すぐ、月村家に向かって力を振るうわけにはいかなくなった。なのはの力は、翔太に嫌われるために振るわれるものではない。翔太とずっと一緒にいるために、翔太から褒められるために使われるものなのだから。
だから、なのはは起動させたレイジングハートを再度元の宝石に戻し、窓に足を掛けた状態だったが、再びベットに腰掛け、様子を探るようにした。
どうやら、翔太はすずかという子のところへ向かうようだ。サーチャーに後を追わせ、そこでなのはは思いがけない言葉を聞くことになる。
―――また明日、学校で。
それはなのはにとって大切な言葉だ。初めて翔太からかけられた言葉だ。友人として夢に見ていた言葉だ。
それをすずかという少女は簡単に翔太から投げかけてもらっている。
―――どうして、どうして、どうして?
彼女は、翔太を傷つけた元凶なのに。吸血鬼なんてバケモノなのに。どうして、彼女は翔太からあんなにも簡単になのはがずっと夢に見ていた言葉を再びかけられているのだろう。
それがなのはには疑問で、羨ましくて、悔しくて、忌々しくて、様々な感情が渦巻く。その中で一番大きかったのは、口惜しさだ。だが、それを晴らす方法はなかった。いや、力はある。だが、今、翔太は笑っている。そこへなのはが力を振るえば、嫌われるのは目に見えている。だから、なのはは動けなかった。
翔太がメイドが運転する車に乗り込んだのを見送ったなのはにできたことは、下唇を噛んで、胸の底からじ
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