無印編
第十七話 裏 (すずか、なのは、忍)
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中で考える。その間も翔太の血の味を堪能していた。しかし、その血の味がすずかに何をしていたかを思い出させる。
―――ああ、血だぁ。
それはすずかにとって忌むべき行為だったはずだ。だが、今の酔ったような思考回路では忌むべき行為への嫌悪感を感じることはなかった。そんな中ですずかの中に生まれた先ほどの疑問への一つの解答があった。つまり、どのようにしてすずかを忘れないようにするか。
―――嗚呼、そうか。忘れられないようにすればいいんだよ。
たとえ恐怖でもいい。たとえ忘れられようとも、すずかを見れば即座に思い出せるような何かを魂にまで刻んでしまえばいい。そうすれば、翔太はすずかを忘れない。それがたとえ、嫌悪と恐怖であってもだ。
その解答は、すずかが望んだ結末への解答ではない。だが、酔ったような思考と血を味わうことで生まれたもう一つの欲求を正当化するためのものなのかもしれない。
つまり、すずかが今、行っている吸血という行為は恐怖を刻むにはおあつらえ向きだということだ。
すずかは、しばらく舐めたせいか、あまり血が流れなくなった翔太の指から口を離すと自らの力の一部である魔眼を生まれた本能によって解放するとまっすぐ翔太を見つめた。彼にかける命令はたった一つでいい。すなわち―――
―――動くな、と。
すずかが願うだけで、彼の身体は動かなくなった。そして、彼女が忌み嫌いながらも彼女の一部である吸血鬼としての本能がまっすぐ口を翔太の首筋へと近づける。普段は隠している鋭い八重歯を生やし、狙いを定めると翔太の首筋へと噛み付く。
噛み付いた場所からじくじくと染み出してくる彼の血液。彼がうわ言のように何かを言っているが、今のすずかの耳にはまったく何も入ってこなかった。ただ、彼の血を飲むことだけに意識を集中させていた。
口から流れ込んでくる翔太の血液は、おいしかった。まるで芳醇なワインのような香りを漂わせ、喉越しはいつも飲んでいる輸血用のパックとは比べ物にならなかった。
しばらくは、それに集中していたのだが、集中しすぎたとでも言うべきだろう。気づかないうちに彼女は翔太のほうへとしなだれすぎたのか、翔太が座っていた椅子のバランスが崩れ、ゆっくりと傾いていってしまった。そのまま、二人は重なりながら床に叩きつけられるように転んでしまう。
それが転機だった。椅子ごと倒れこんでしまった衝撃で、すずかの思考回路がいっきに元に戻った。当然、今まで何をしていたかを正確に記憶したままで。今まで自分がバケモノである部分を忌み嫌っていたすずかがそのことを許容できるはずがない。
「あ、あ、あぁぁ」
倒れこんだ格好からはすぐに起き上がることができたが、目の前にある惨劇を目にして、すずかは声を出すことができなかっ
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