無印編
第十七話 裏 (すずか、なのは、忍)
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の後、翔太が白だと分かれば、あるいは、黒だとしても会談の内容が失敗すれば、この状態がずっと続くのだと。翔太にとって月村すずかという存在は、好意でも、嫌悪でも、嫉妬でも、羨望でもない、ただの道端に転がる石ころのような無関心だ。
もはや名前で呼んでもらう事も叶わず、赤の他人として扱われる。それが日常に変わるということを示していた。
―――嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ、嫌だよぉ。
それに気づいたすずかは心の中でそれを拒否した。人を近づけまいとしていたすずかにようやくできた心を許せる友人。昨日までは一緒に笑って、名前を呼んで、他愛もない話をしていた友人が次の日から赤の他人になる。それは、幼少の頃にコンプレックスで自らの殻に閉じこもり孤独だったすずかがここ二年の友人がいる生活に慣れてしまった今、その孤独は、耐え切れるものではなかった。
どうしよう、どうしよう、と紙の束を無意識のうちに二つ折りにしながらすずかは考える。だが、その問いは昨夜から繰り返している問いだ。ここ数分で答えがでるほど簡単なものではない。だがしかし、それでも、と一筋の光明を探してすずかは考える。
必死に考え込みながらも手を動かすすずかの耳に不意に翔太の声が耳を打った。
「いたっ!」
久しぶりに聞いた声が痛みを訴える声というのも何とも色気のないものだが、それでも痛みを訴える声に反応しないわけがなかった。慌てて、すずかが翔太の方を見てみると、翔太は右手の人差し指を銜えていた。
「ショウくん、大丈夫?」
ちょうど、口から人差し指を離し、何かを探すようにポケットに手を突っ込んだ翔太に声をかけるすずか。同時に目に入ったのは、翔太の人差し指だ。第一関節より上の腹の部分が紙で切ったのだろう、少し切れており、そこから血が流れているのが目に入ってきた。
それは無意識の行動だった。怪我をしたときの対処法をすずかが実行したのか、あるいは彼女の中に脈々と流れている吸血鬼の血が反応したのか分からない。だが、気がつけば、すずかは翔太の手首を手に取り、未だ血の流れる人差し指を銜えていた。傷口を舐めるように舌の上で転がす。同時に舌の上で感じられるのは、翔太の傷口からじくじくと流れている血の味だった。
その血の味を感じたとき、すずかの体が沸騰したように一気に熱くなった。今まで考えていたこともすべてどこかに吹き飛び、ただ翔太の傷口から流れる血の味を味わうことしか考えられなくなっていた。
しばらく、翔太の血の味を味わっていたすずかだったが、やがてその味に慣れてきたのか、少しずつ考えるという能力が戻ってきた。もっとも、その思考回路もまるで酔ってしまったようにはっきりとしないものだったが。
―――あれ? 私……なにやってるんだろう?
ぼんやりと戻った意識の
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