無印編
第十七話 裏 (すずか、なのは、忍)
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快にさせたら、それはなのはにとって一大事だ。だから、こうして事情を聞いている翔太の後ろ姿をなのは見ているしかなかった。
話が進むにつれて漏れ聞こえる声で、どういう状況か分かってきた。つまり、彼女はもう一人の図書委員に逃げられて、一人で図書館便りを作らなければならないらしい。
嫌な予感がした。いや、それは確認に近い。なのはがよく知る翔太ならば、こんな状況で、彼女に別れを告げるという選択肢はないと知っていたから。それでも、それでも、なのは、黒髪の彼女よりも自分を選んでほしいと願った。だが、その願いが届くことはなかった。
「ごめん、なのはちゃん、僕、すずかちゃんを手伝ってから行くから、先に行って探しててくれないかな?」
―――その子がやる仕事なのに。逃げた子が悪いのに。どうしてショウくんが。一人で作らせれば良いのに。これからショウくんと一緒にいられる時間なのに。
なのはの中にいくつもの不満が生まれる。だが、それを翔太に言うはずもない。手伝うということは、翔太が決めたことだ。翔太が決めたことに否と言えるはずがない。だから、なのはは演じる笑みで翔太に告げる。
「うん、分かった。早く来てね」
その笑みの下にどうしようもない苛立ちを隠しながら。
◇ ◇ ◇
月村すずかは、翔太が手伝ってくれることに歓喜と困惑を隠せずにいた。
もう一人の図書委員に逃げられたのは腹が立つ。気づいたら逃げ出していたのだ。彼は、本が好きで図書委員になったわけではなく、なりたかった委員会に入れなかったためにじゃんけんでこちらに回ってきたのだから、あまりやる気がないのは納得できるが、それでも作業はきちんとやって欲しいと思う。
正直、この作業を一人でやるのは億劫だったので、翔太が手伝うと言い出してくれたのは有り難かった。だが、同時に昨夜の姉の言葉が、すずかの胸の中に棘として刺さる。もしかしたら、もうすぐ失うかもしれない友人にどう接して良いのか分からなかった。
昨夜から今日までずっとどうやったら翔太を会談に行かないように仕向けられるだろうか、と考えていたが夜の一族特有の頭脳を使っても名案は中々生まれない。
今日もずっと考え込んでいたのだが、どうやらその空気を翔太は感じ取ったようだ。いつもなら他愛もない話をしながら進めるであろう作業も今日は無言で黙々と行われていた。
その気遣いが有り難い反面、寂しいという感情も生まれた。もしも、すずかが何も考え込んでいなければ、きっと翔太は最近読んだ本や取りとめもない話をすずかにしてくれるだろう。気を使ってくれるのは分かるが、無言というのはただただ寂しいだけだった。
それに気づくと同時にもう一つのことにも気づいてしまった。つまり、万が一、夜の一族との会談
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