無印編
第十七話
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答えたというか、答えさせられたというほうが正しいような気がするが。僕は渇いた笑みを浮かべるしかなかった。
たった一言、それをいうだけだったのに僕の喉はすっかり渇いており、手も冷や汗でぬるぬるだった。僕は、手の冷や汗をズボンで拭うと渇いた喉を潤すためにノエルさんが入れてくれた紅茶を口に含んだ。
「それで、君は何者かしら?」
「へ?」
さくらさんからの質問の意味が分からなくて、僕は間の抜けた声を上げてしまった。
「普通の小学生が取り乱しも怯えもせず、私たちの前に現れて、しかも、白を切ろうなんてありえるはずないでしょう。いくら君が大人びているといっても、その態度はあまりに異常すぎる」
まさか、異常とまでいわれるとは思わなかった。いや、異常なことには変わりないのだが。だが、僕が抱えている秘密のうち二つは話すわけにはいかなかった。もっとも、吸血鬼の家系だから片方ならまだしも、もう片方は信じられないだろう。だから、僕はこちらに関しては完全に白を切ることにした。
「買いかぶりすぎですよ。僕はちょっと大人びているだけの小学生ですよ」
「そう。……これを見てもそういえる?」
まるで悪戯をたくらむ少女のような笑みを浮かべると忍さんに目配せし、忍さんは上着のポケットから『それ』を取り出した。
「それはっ!?」
思わず僕は過剰に反応してしまった。なぜなら、忍さんのポケットから取り出され、テーブルの上に差し出されたのは僕たちがここ一ヶ月近く探していたジュエルシードそのものだったのだから。
なぜ、これがここに? と思うと同時に思い出すのは、少し前のジュエルシードの反応が突然消えたときのこと。なのはちゃんは黒い少女から貰ったジュエルシードが月村家で見つけたものだと言っていたが、事実は違ったようだ。どうやら、なのはちゃんが黒い少女から貰ったのは、黒い少女が別のところで見つけたジュエルシードだったらしい。
どうして、これを? と忍さんたちに尋ねようと視線をテーブルの上のジュエルシードから忍さんたちに移したところ、彼女たちが的を射たというような笑みを視界に映すことになる。
この時点でようやく僕は、自分の落ち度に気づいた。突然、出てきたジュエルシードに思わず反応してしまったが、あの質問の後に僕の反応は、僕がジュエルシードに関係していることを証明していることに他ならない。
「どうやら、これに見覚えはありそうね。そうよね、これは君が御神の剣士を護衛にしてまで探していたものなのだから。それで、君は何者なの? どうして君はこれを探してるの? 今、この街で何が起きてるの?」
さて、どうやらさくらさんたちには僕が知っている以上のことがありそうだ。そもそも、僕は彼女たちがこの事件に首を突っ込んでく
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