無印編
第十七話
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ろう。魔法のこととか話せれば、対等にもなるのだろうが、ユーノくんの了解を貰わなければならないうえにこれ以上、魔法について知っている人間が増えるのはユーノくんにとっても都合が悪いだろう。本来なら、僕たちのような魔法技術を持たない人に魔法を教えることはユーノくんたちの法で違法らしいし。
こちらが知らないことにすれば、向こうも暗黙の了解としてくれるはずだ。僕は知らない。つまり、僕は誰にも話す意思はなく、秘密にするということだ。向こうも追及してこないし、秘密がばれることもないのだから。相手が見知らぬ人ならまだしも、僕と忍さんの間にはそれなりの信頼関係はあるはずだから、おそらく大丈夫だろう。
そんな風に考えをまとめながら、僕は月村家の門をくぐった。
◇ ◇ ◇
結論からいえば、僕の考えは甘かったと言わざるを得ない。
僕を出迎えてくれたのは忍さんだった。だが、その会談の場にはもう一人在席していた。彼女たちの叔母である綺堂さくらさんだ。もっとも、さくらさんは忍さんたちの叔母という割には非常に若かったが。会談は、僕たち三人で進んだ。
ある程度経った現在、さくらさんから感じる威圧感は確実に部屋の温度を2度は下げていたし、彼女から本気の視線を向けられた瞬間、背筋に悪寒が走り、今も冷や汗が止まらない。
何でこうなったか分からない。僕は車の中で考えたとおり、白を切って暗黙の了解としてお互いに丸く治めるという方向で忍さんとさくらんの会話を進めていたのだが、何度か「知らない」と繰り返したところで、さくらさんに視線を向けられ、先ほどから感じる威圧感をぶつけられたのだ。
「ショウくんだったかしら? もう一度、聞くわね? あなたは、私たちの秘密を知ったわね?」
僕に向けられた視線は間違いなく狩人のもので、もしも今度も「知らない」と答えれば、力づくにでも本音を聞かされるだろう。まるで、僕が知っていることに確信を持っているような言い方なのが気になるが、先ほどまでの問答の間に不備があったのだろう。
ともかく、ここでもう一度「知らない」という度胸があれば、この場は切り抜けられたのかもしれないが、彼女から感じる威圧感を前にして知らない、と答えられるような勇気は僕にはなかった。まさしく、今の僕は腹を見せた犬のような状態だ。つまり、完全な降伏状態。
「さすがに白を切れませんね。はい、その通りです」
僕がさくらさんの言葉に肯定の意を示すとほっ、と忍さんとさくらさんが同時に安堵の息を吐いた。それはもしかして、僕のことを手に掛けなくてよかったと安堵したのだろうか、と思うと肝が冷えるなんてレベルの恐怖感ではないので考えないようにした。
「そう、よかったわ。素直に答えてくれて」
「ははは」
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