無印編
第十七話
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しょう」
「はい」
情けないことだが、僕はノエルさんの手を借りて、近くに停めていた車の後部座席に乗り込んだ。ノエルさんが運転席に回っている間、僕は後部座席の窓を開けて不安そうな顔をしている恭也さんとなのはちゃんに顔を合わせた。
「ショウくんっ! 大丈夫なの? もしも、嫌々なら―――」
なのはちゃんが僕の心配をしてくれるのはありがたいのだが、これは避けては通れない道だと分かっている。だから、僕がいえるのは、一言だけだった。
「大丈夫だよ。だから、また明日。なのはちゃん」
なおも心配そうに僕を見つめるなのはちゃんをできるだけ安心させるように僕は笑って別れを告げた後、車はゆっくりと走り始めるのだった。
◇ ◇ ◇
車の中は静謐な空間だった。ノエルさんはもともとメイドとして傍に控えるという立場からだろうか、口数が多いわけではなかったし、僕も今は考えに没頭したかったからだ。
こうして月村家に呼ばれた以上は、どうやら僕と話をするつもりらしい。ノエルさんが小学校の前で待っていたのは、僕が他の誰かに話さないための予防策だろうか。そして、肝心の話す内容だが、やはり『契約』とやらについてだろうか。もはや記憶の彼方と言っても過言ではない記憶を辿れば、ぼんやりと覚えている契約の二文字。吸血鬼という言葉に付随してついてきた言葉だ。
確か『とらいあんぐるハート3』では、主人公―――つまり、恭也さんが忍さんと恋仲になったときに聞かれたようなきがする。受け入れなければ、ゲームとしての物語は成り立たないわけだが、これを拒否した場合、どうなっただろうか? えっと……そう、確か記憶を消されるとかなんとかだったような気がする。もっとも、確証はないが、確か殺されるような終わり方ではなかったことは確かだ。
さて、僕のスタンスだがどうするべきだろうか。僕としてはすずかちゃんが吸血鬼だったところで特に気にしない。それをいうなら、僕は生まれながらにして前世の記憶を持ち、今では魔法使いの卵なのだから。いわゆる一般人と異なるという点で言えば、僕のほうが上なのかもしれない。
しかし、それは僕の考えだ。向こうはそうは思わないかもしれない。そのための『契約』だろう。
それにその点が弱みとなっているのなら、僕がそれを握っているというのは、すずかちゃんにとっても僕にとっても居心地が悪いだろう。もしかしたら、今まで通り友達として付き合えないかもしれない。それは、少し寂しい。すずかちゃんは、周りの子たちと違って精神年齢が高い上に本の話なんかもできる稀有な友達なのだから。
ならば、知らないことにしよう。向こうだって、僕が知らないことにすれば、丸く収まるはずだ。すずかちゃんも僕に遠慮することはなくなるだ
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