無印編
第十七話
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トの山が残っていた。あまりに自然すぎて、先ほどまでのことは嘘じゃないか、と思う一方で人差し指に張られた猫がプリントされた可愛らしい絆創膏だけが、先ほどのことを事実だと告げていた。
「ショウくん、大丈夫?」
「あ、うん」
一体、どうなっていたかを思い出していた矢先に声をかけられ、半分気のない返事をしてしまった。だが、なのはちゃんはそれでも満足してくれたようで、安堵の息を吐いていた。ところで、なんでジュエルシードを探しているはずのなのはちゃんがここにいるのだろうか。
理由を聞いてみると、あまりに僕からの連絡が遅くて様子を見に来たらしい。僕のポケットに入れたままの携帯電話を見てみるとなのはちゃんと恭也さんからの着信履歴が20件程度並んでいた。確かにこれだけ電話してでなかったら、何かあったんじゃないかって心配するだろう。
「いったい、どうしたの?」
正確なところは僕が聞きたいところである。だが、まさかすずかちゃんに血を吸われちゃいました。彼女は吸血鬼です。なんていうわけにもいかず、疲れたところで寝ちゃった、と答えておいた。だが、その回答もある種の墓穴だったようで、なのはちゃんにはショウくんも無理しちゃダメだよ、と怒られてしまった。前回、なのはちゃんが倒れたときのことを言っているらしい。
ごめんね、と謝って僕は、教室から出るために立ち上がった瞬間、視界がぶれた。がくん、と膝に力が入らず椅子に再び座ってしまう。まるで立ちくらみだ。先ほど、血を吸われたことが原因とするなら、完全に貧血だろう。
「ショウくんっ!? 大丈夫っ!?」
オロオロと心配そうな表情で駆け寄るなのはちゃんに対して大丈夫だから、と制止を掛ける。どうやらいつもどおりに動こうとしたのが間違いだったらしい。血が足りなのだから、ゆっくり立ち上がるべきだった。あまり激しい運動もするべきではないだろう。
「お兄ちゃん、呼ぶ?」
「……そうしてもらえるかな」
おそらく、今の僕が歩いたとしてもよっぽどゆっくりになってしまうだろう。ならば、格好を気にせずに恭也さんに手伝って貰ったほうがいい。身体はともかく幸いにして意識ははっきりしているのだから、それを幸運と思うべきだ。
その後、なのはちゃんから恭也さんを呼んでもらい、僕は恭也さんに背負われて学校を出た。当然、恭也さんからは、何があった? と聞かれたが、何もありませんよ、と押し通した。何か言いたそうだったが、恭也さんも僕が何も言うつもりをないことを悟ったのだろう、そうか、と一言だけで後は何も言わなかった。
恭也さんに背負われ、職員室以外に明かりのついていない聖祥大付属小を出たのは七時前だった。校門近くの守衛所を出ようとしたとき、一人の人物が僕たちの正面に立ちはだかるようにして
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