無印編
第十七話
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生する僕の前世の記憶のこと、吸血鬼のこと。そう、僕は知っていたはずだ。すずかちゃんのことは直接知らなくても予想はしていたはずだった。
―――月村すずかが吸血鬼であることを。
彼女たちがどの程度の能力を持っていたかなどはすっかり記憶の果てではあるが、人の血が必要だったことは覚えている。今、僕の血を舐めている理由が、すずかちゃんが吸血鬼であることに起因しているにしても、なぜこのタイミングで? という疑問はある。僕とすずかちゃんの付き合いは3年目だ。もしも、僕の血を吸うタイミングを見計らっていたというのならば、いくらでも機会はあったはずだ。もしかすると、昨日から悩んでいたのはこのことに起因するのか。
色々、考えを巡らしたかったのだが、彼女に吸われる血の量がどうやら僕の身体に対して限界に達してしまったらしい。まるで睡魔に襲われたように瞼が重たくなる。ゆらゆらと揺れる僕の視界から見えるのは、すずかちゃんの闇のように黒い髪の毛だけだったが、不意に視界が動いた。僕の身体は相変わらず動かないことから、どうやらすずかちゃんが僕に体重を掛けすぎて椅子のバランスが崩れてひっくり返っているというのが正解らしい。ドスンという衝撃と共にすずかちゃんの体重を身体全体で受け止めることになり、非常に痛かった。だが、同時に金縛りが解け、身体に自由が戻る。もっとも、血の吸われすぎで、身体を動かすことはできなかったが。
すずかちゃんもその衝撃で正気に戻ったのか、すぐに僕の上からどいてくれた。立ち上がったすずかちゃんの顔からは熱にうなされたような表情はなくなっていた。代わりに信じられないようなものを見るような瞳と口の端から流れる僕の血が彼女の顔を支配していた。
どうしよう、どうしようという混乱と不安がすずかちゃんの表情から見て、取れ、僕は大丈夫だよ、と声を掛けてあげたかったのだが、僕の身体はその行動を許すことなく、先ほどから襲ってくる睡魔にあっさりと降伏してしまい、一言も口に出すことなく僕は意識を失うのだった。
◇ ◇ ◇
「ショウくん! ショウくんっ!!」
誰かが僕を揺らしている。うっすらと開けた瞼の向こうには心配そうに僕を覗き込むなのはちゃんの顔があった。ぼんやりと意識が戻った瞬間、僕は肌寒さを感じて一気に意識が覚醒した。
顔を上げたときに僕は状況を把握した。
どうやら、僕は腕を枕にして寝ていたようだ。最後に覚えている情景の太陽はすっかり山の向こう側に姿を隠しており、辺りはまっくらだ。教室もすっかり闇に包まれている。
だんだんと僕はこの状態になる前の状況を思い出していた。すずかちゃんがいるような気配はない。代わりにいるのはなのはちゃんだ。僕の目の前にはまるで途中で作業を放置したようにプリン
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