無印編
第十七話
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ゃんに声をかけようとしたのだが、正直、なんて声をかければいいのだろうか悩んだ。
ありがとう、ではないだろうし、ごめんなさい、でもないだろう。なんで? と理由を問うのもバカらしい。ならば―――と考えていたのだが、僕が口を開くよりも先に僕の指からを口を離したすずかちゃんと目が合った。彼女の目はどこか焦点が合っていないようなトロンと蕩けたような目をしており、どこか様子がおかしいことに僕は気づく。熱にうなされているというか、意識がはっきりしないというか、そんな感じの印象を受ける。むしろ、それは僕の状態のような気がするが。
すずかちゃんの様子が心配になった僕は、再度声を掛けようとしたのだが、今度も失敗した。考えが別の方向に引っ張られたわけではない。単に口から声が出なかったのだ。声を発しようとしても喉が動かないとも言うべきだろうか。しかも、動かないのは口だけではなかった。身体全体が金縛りにあったように動かないのだ。
転生という現象や魔法に出会っていなかったら、僕はもっと混乱しただろう。だが、経験が人を強くするというのは本当らしい、僕はどうにか冷静を保つことができた。だが、冷静になったからといって事態が好転するわけではない。むしろ、冷静に考えられる分、余計に混乱したというべきだろうか。なにせ、原因が見つからないのだから。助けを求めようにもそのすずかちゃんの様子すらおかしい有様。
いったい、どうしよう? と悩んでいたところにすずかちゃんから動きがあった。
「……もっと、ほしい」
そういいながら、ゆっくり近づいてくるすずかちゃん。
僕の聞き違いでなければ、彼女はもっと欲しいと呟いたような気がするが、一体なにが欲しいのだろうか。僕が彼女に与えたものなど何もないはずだが。
そんなことを考えている間にも、瞳を紅くしたすずかちゃんがゆっくりと何かを求めるように両手を広げて近づいてくる。避けようにも僕は身体の自由が一切利かない状態であり、なすがままになるしかなかった。やがて、ゆっくりとした動きだったが、すずかちゃんは僕に抱きつくように身体を寄せ、両手を後頭部に回す。人が抱きついたときの体温を身体全体で感じながら、身体自体は動かないのに感触だけはあることを恨んだ。同時にすずかちゃんは首元に顔を寄せているのか、彼女の熱にうなされたような、興奮しているような息遣いで彼女の息が僕の耳をくすぐる。
だが、恥ずかしさを押さえて、冷静に物事を考えられたのはそこまでだった。何が起きているのか把握しようとしている最中、急に首筋に注射を刺したときのような痛みを感じる。その傷口から血が流れるのが分かり、同時に傷口に這う舌の感触も感じられた。
そこまで状況が進んでようやく一つの事柄を思い出した。彼女の姉である忍さんのこと、そこから派
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