無印編
第十七話
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らないけど、月村家と同じく裏で管理している一族の一つなのだろうか。
さくらさんの言葉を聞いて忍さんは困惑したような表情をしていた。
「何か問題でも?」
「え? だって……恭也も一緒なんでしょう?」
「ええ、そうですよ」
美由希さんは高校三年生ということも相まってか、中々放課後に自由になる時間はない。そのため、比較的時間が取れる大学生の恭也さんが殆どだ。美由希さんが出てくるのはたまの休みぐらいだった。
「私、恭也に話すときは契約のときって決めてたのに」
「あら、それじゃ、恭也くんが去年の集まりであなたが言ってた子?」
さくらさんが尋ねると忍さんは顔を真っ赤にしてコクリと頷いた。
はて? 契約? そういえば、僕にも聞き覚えがある単語だ。しかし、先ほどの情報交換の中では出てこなかった単語でもある。
「あの、契約って一体なんですか?」
思い切って聞いてみると、さくらさんは簡単に答えてくれた。
つまり、簡単に言うと婚約の儀式のようなものだ。自分の秘密を話し、永遠に一緒にいることを約束する誓いの様なものらしい。ちなみに、これを拒否すると魔眼という能力で記憶を消されてしまうらしい。しかも、この範囲が非常に大雑把で、僕の場合だとすずかちゃんが僕の血を吸った場面だけではなく、『月村すずか』という人間に関連することがすべて消されてしまうらしい。つまり、次の日から赤の他人なのだ。実にリスキーな契約である。
「あれ? ってことは、忍さんって恭也さんことが好きだったんですか?」
「そうやってストレートに言わないで」
あまりにストレートに言いすぎたせいか、忍さんは真っ赤になった頬をさらに赤く染めて俯いてしまった。確かに誰かに自分の意中の人を指摘されるのは非常に恥ずかしいものだ。
「そろそろ、年貢の納め時ではないでしょうか」
傍に控えていたノエルさんが悪戯っぽい笑みを浮かべて、それに―――と言葉を続ける。
「おそらく、明日にでも恭也様はお嬢様に今日のことを聞きますよ」
ああ、なるほど。確かに僕が連れて行かれる前の会話は、詳しいことは忍さんに聞け、と言ってるとも取れなくもない。ノエルさんにしては冷たい言い方だな、と思っていたが、そんな裏があったとは。
「ノエルゥゥゥゥゥゥっ!?」
忍さんの驚いた声を挙げ、僕たちはその声を聞いて笑った。最初の空気とは打って変わって和やかな雰囲気にこの場は包まれるのだった。
さて、しばらく笑いがリビングを包んだ後、しばらくしてさくらさんが佇まいを正した。
「蔵元翔太くん、今回は、一族のすずかが申し訳ないことをしたわね。謹んでお詫び申し上げるわ」
そういうと、さくらさんも忍さんもノエルさんも深く頭を下
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