フェアリィ・ダンス編
第57話 =現実で待っていたもの=
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付にいる看護士に通行パスを発行してもらいポケットに突っ込んで――普通はクリップで留めなければいけないけど――エレベーターへと乗り込む。さすが、高度な医療機関なのか数秒で18階に到着しその分厚い扉が軽々と開く。このフロアはどうやら重病な方が多くいるらしく廊下には誰もいない。
「……」
無言でこのフロアの突き当たりの前に部屋まで行くと銀色に輝くネームプレートが眼に入る。《結城悠香 様》という名前の下にあるスリットにポケットに突っ込んだパスを通すと、電子音とともに自動で扉が開く。扉のわりには…と思わせることが絶対になさそうな部屋の中は真冬なのに色とりどりの花が生けられている。
「やっぱりか…」
もしかしたらという希望を打ち砕くかのようにカーテンの奥にあるジェルベッドに眠った、アインクラッドでは一緒に生活をしていた仲間、そして幼馴染でもある人がいた。
「…あれ…来てたのか」
「あ、おはよ。リクヤ」
その奥に座っているのは黒髪で短髪の少女だった。彼女もアインクラッドでは同じく仲間だった人だ。向こう側の世界での名前は『サチ』と名乗っており、現実での名前は『麻野美幸』というらしい。だが、向こうで出会った人なのでいまだに会った時はほぼ必ずアバター時の名前を呼んでしまうが…。
「…目覚め…てないな」
「うん…あれからもう2ヶ月なのに…」
目の前の少女の言うとおりSAO事件は2年前のあの日、ヒースクリフVSキリト&俺、という戦いで終わったはずだった。実際に彼女もゲーム終了のアナウンスを聞いていると言っていた。
「…早く目覚めてくれないかな…」
「ユカに謝らないといけないもんね。…目の前で死んじゃったこと」
彼女の言うとおり、俺は一度75層ボス戦で生き残った人たちの目の前で一度死んでしまった。連絡の取れたリズやシリカ、サチには電話で生きているということを伝えたら電話越しでめちゃくちゃ怒られたのはまだ記憶に新しい。あそこでキリトをかばった俺が100%悪いので何も言えないが、生きているということで許してはもらえた。
「…じゃあ、わたし帰るね」
「おう。…見舞い、ありがとな」
「なんで、リクヤがお礼言うの?」
「…幼馴染として、かな」
その気持ちはあながち間違ってない。でも、それだけじゃないような微妙な気持ちも存在するのも確かだ。それだけじゃなくてサチが来てくれた、ということにも微妙な気持ちもあるけど。
そんな事を思っているとこちらに手を振って後ろへ歩き出すサチ。それに、俺も手を振り返して見送る。
「…たく、俺以外の人に迷惑かけるなっての」
デコピンを柔らかそうな頬に一発繰り出してから時計を見る。するとそろそろ正午である12時になるところだった。隣の部屋にいるかつて
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