無印編
第十六話 裏 (なのは、フェイト、忍)
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くなると聞いて聞かなければよかった、と思ったのは記憶に新しい。
さて、そんな宝石に関わろうとしている翔太が真っ白であるはずがない。ちなみに、退魔士として『蔵元』という苗字に聞き覚えは大家である神咲家にもなかった。
極めつけは、今日の出来事だ。海鳴の街に現れた気象衛星に写らない雷雲と雷。それが確認された直後、業界の中でも優秀とされている尾行屋が翔太たちをロスト。一時間に渡り、尾行屋は彼らを見失っていた。彼曰く、煙のように消えたらしいが、退魔術の中でも隠密の術はあろうとも、煙のように消えることは不可能だ。つまり、退魔術以外の何らかの技術を使ったと思われる。
これだけなら、しばらく翔太を調べればいいのだが、さらに状況をややこしくしたのは、彼女の叔母であるさくらだ。さくらに頼んでいた人狼族の調査が終わり、報告を聞いたところ、日本からはぐれ者は出ていないらしい。欧州から流れてきたものか、とも思ったが、欧州もここ数十年単位ではぐれ者など出ていないというのだから驚きだ。つまり、忍が見た人狼族はさくらが知る人狼族以外からの流れ者ということになる。この件も踏まえて数日後にさくらが月村家に来ることになってしまった。
正直、忍は八方塞だった。翔太は、調べても証拠は一切現れず、状況証拠のみが積みあがっていく。現状も一緒に報告したさくらにはそれが一層、不気味に思えるらしい。今度、さくらが来たときに翔太も呼び出すことになってしまった。
それで、もしも翔太が裏の人間ならばいい。だが、だが万が一にも本当にただの人間だったら。当然、翔太に夜の一族による契約を迫るだろう。そして、彼が拒否すれば、夜の一族の記憶を彼からすべて消すしかない。そうやって、彼女たちは生きてきたのだから。
だが、それは単純に月村すずか、月村忍のことを忘れさせるということに繋がらない。人間の記憶はいい加減であるが、だからこそ、同時に記憶の封印も解けやすい。故に月村に関する人から記憶を消さなければならない。近くで言うとアリサ・バニングスも対象になるだろう。つまり、すずかは一瞬でたった二人しかいない友人を両方とも失うのだ。
しかし、だからといって、今、海鳴で起きている何かが自然に解決することを待つこともできない。月村はこの海鳴を中心とした土地の裏側を治めている。治める以上、力を示すことは必要だ。それが単純な力だったり、権力だったり、お金だったりもするが。それらの中で一番舐められては困るのは意外にも単純な力だ。これを失うとすぐさまこの土地を狙う様々な組織から急襲されるだろう。それを避けるためにも早期解決、あるいは介入が必要だった。いや、もしも年度初めという忙しい時期でなければ先日の連休中にでも両親は翔太を呼び出していただろう。
あちらが立てば、こちらが立たず。忍の苦悩は続きそう
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