無印編
第十六話 裏 (なのは、フェイト、忍)
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高町桃子は、突然の娘の言葉に困惑していた。
「要するに可愛い洋服が欲しいのね?」
確認するように末娘のなのはに問いかけると、うんうん、と力強く何度も頷くなのは。原因はよく分からないが、どうやらなのはは可愛い洋服が欲しいらしい。あまりに唐突で初めての出来事に困惑していた桃子も段々と頭が回ってきた。
末娘であるなのはがこんなことを言ってくるのは初めてである。前々から何度か洋服を買うためになのはを誘ったことがあるが、そのときは、拒否された。今、なのはが着ている洋服は、桃子が仕方なくディスカウントストアで買ってきた適当なものだ。もっとも、それなりにデザインは気にしてはいるが。
なのはが突然、こんなことを言い出した原因に心当たりがないといえば、嘘になるだろう。原因として考えられるのはたった一つしかなかった。すなわち、最近、なのはと友好関係を結んでいる蔵元翔太である。現在、彼以外には友人がいないことを桃子は知っているし、家族が言っても聞かなかったなのはが突然、こんなことを言い出すのは、翔太ぐらいしか考えられなかった。
しかしながら、翔太が原因だとするとずいぶん、微笑ましいことだ。もしも、翔太が女の子であれば、翔太のような洋服が欲しいとねだるだろう。だが、彼は男の子。彼の洋服に憧れたとしたら、『可愛い』などという形容詞はつかないはずだ。つまり、なのはは翔太に対して可愛らしい自分を見せたいのだろう。ずいぶんと女の子らしい思考で安心した。
もっとも、その思考に至るには何かの切欠が必要なのだが、息子の恭也に聞いても思い当たる節はない、という答えが返ってきた。もともとそういった方面には疎い恭也のことだ、思い当たる節がないのではなく、気づかなかっただけだろう。桃子はそう結論付けた。
なのはに「分かったわ。今度の連休に買いいきましょう」と言うと、桃子にも分かるぐらいに上機嫌に自分の部屋に戻っていった。桃子はその後姿を見送ると炊事場の片づけへと戻る。当然、今度の連休を桃子も楽しみにしていた。美由希はもう高校生で着飾るという年ではないし、そもそも洋服などに対する意識は低い。ゆえに、桃子はもしかしたら、なのは以上に連休を楽しみにしているのかもしれない。娘を着飾ることを面倒だと思う母親などいないのだから。
◇ ◇ ◇
高町美由希は、一生懸命に洋服を選んでいる妹を微笑ましく見ていた。
今日の主役は彼女の妹である高町なのはである。美由希は面白そうだから着いてきただけである。案の定、翔太もついてきで面白いことになっていたが。彼には、なぜ、この場にいるのか分からないということを問いかけてきたので、「君のせいだよ」と答えておいた。
事実そうなのだから仕方ない。先日、兄で
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